研究課題
Crispr/Cas9システムの発見によりゲノム編集技術が飛躍的に向上した。しかし、現時点の技術レベルでは、ゲノム編集を施した細胞に意図しないゲノム編集が加わることが不可避である。この問題を解消するために、報告者らが開発した、DNA1本鎖切断であるニックのみを用いてゲノム編集法について、その分子機構を解明する研究を行った。最終年度は、ニックによるゲノム編集法(ゲノムのみにニックを入れる「シングルニック法」およびニックをゲノムとドナープラスミドバックボーンに入れる「SNGD法」)に係わる分子について、従来のDSBを用いた手法と比較して検証した。DSB法では、ゲノム編集にCtIP、RAD51といった古典的相同組換え修復(HR)のコアファクターが必須であった。一方、シングルニック法にはDNA end resectionを誘導するCtIPは不要であり、組換えの実行分子であるRAD51は必須であった。一方、SNGD法はCtIPにもRAD51にも依存性が認められなかった。ドナープラスミドにおけるホモロジーアームが長いほどにゲノム編集効率が向上するなどの前年度までの研究成果から、DNAレベルではHRと同様のDNA修復機構が用いられていることが確実である。このことから、SNGD法では非古典的なHRが使われていることが明らかとなった。一方、HR促進剤によるSNGD法による効率化は認められなかった。これは、HR促進剤の作用点が古典的HR制御に関与した部分であるためだと考えられる。SNGD法によるゲノム編集は、レポーター細胞のみならず、内在性遺伝子のゲノム編集においても有用であることも示された。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Genome Research
巻: 28 ページ: 223-230
10.1101/gr.226027.117
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 9966
10.1038/s41598-018-27767-6
http://www.bcr.med.osaka-u.ac.jp