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2016 年度 実施状況報告書

ニューロンにおけるDNA2本鎖切断修復能低下が認知機能に及ぼす影響の究明

研究課題

研究課題/領域番号 16K12599
研究機関大阪府立大学

研究代表者

児玉 靖司  大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経幹/前駆細胞 / DNA2本鎖切断 / 非相同末端結合 / DNA依存的プロテインキナーゼ / 神経系発生
研究実績の概要

神経系細胞におけるDNA2本鎖切断(DSB)修復系の特徴を明らかにするために、マウス神経系細胞の発生段階におけるDSB修復能を解析した。胎齢12.5日~16.5日のB6C3F1マウスの脳組織から線条体を分離して、神経幹/前駆細胞(NSPC)を培養した。次にNSPCにX線(1Gy)を照射し、その後の修復過程におけるDNA2本鎖切断(DSB)量をリン酸化ヒストンH2AX(ガンマ-H2AX)フォーカス数で定量化して調べた。X線誘発DSB量は、照射後0.5時間で細胞当たり13個程度まで増加し、その後1~6時間でしだいに減少し、6時間後では3個程度、24時間後は非照射レベルの2個未満になった。このX線誘発DSBの修復動態は、胎齢12.5日、14.5日、及び16.5日で違いはなく、NSPCではDSB修復能に胎齢間による差はないことが分かった。そこで、神経組織における主要なDSB修復系である非相同末端結合(NHEJ)の必須因子であるDNA依存的プロテインキナーゼ(DNA-PK)の活性、並びにその触媒サブユニット(DNA-PKcs)の遺伝子発現とタンパク質発現を、胎齢10.5日、12.5日、14.5日、16.5日、17.5日のB6C3F1マウス脳組織で調べた。その結果、DNA-PKcs遺伝子の発現は5種の胎齢間で全く差が見られなかったのに対し、タンパク質発現は、胎齢12.5日で、10.5日に比べて約2.5倍に増加し、その後胎齢が進むにつれて低下し、17.5日で10.5日と同レベルに戻った。一方、DNA-PK活性は、タンパク質発現と同様に10.5日に比べて12.5日で増加し、そのまま17.5日まで高い活性をほぼ保持していた。胎齢12.5日はニューロン発生が盛んになる時期と重なることから、本研究の結果は、神経系細胞の発生期にDNA-PKが重要な役割を果たしている可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究推進計画では、神経系細胞におけるDNA2本鎖切断(DSB)修復系の特徴を明らかにするために、1)神経系細胞の発生段階におけるDSB修復能の解析、2)神経系細胞の発生段階におけるDNA依存的プロテインキナーゼ(DNA-PK)活性の測定、及び3)アミロイドベータによるDSB修復阻害とその阻害作用によるDSB蓄積の関係解析、以上の3項目について実施する予定であった。このうち、3)のアミロイドベータによるDSB修復阻害に係る解析については、計画通りに進めることができなかった。その主な理由は、1)と2)の実験系確立に予定以上の労力を要したために時間に余裕がなくなったことによる。一方、神経系細胞の発生段階におけるDSB修復能の解析では、胎齢12.5日、14.5日、16.5日のB6C3F1マウスの神経組織におけるDSB修復能について、ほぼ計画通りに解析できた。また、神経系細胞の発生段階におけるDNA-PKの解析では、胎齢10.5日、12.5日、14.5日、16.5日、17.5日のB6C3F1マウスの神経組織におけるDNA-PKcsの遺伝子発現量、タンパク質発現量、及びDNA-PK活性について、ほぼ計画通りに解析できた。以上から、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

平成29年度は、アミロイドベータの蓄積が、ニューロンにおけるDSB修復能にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、以下の項目について研究を進める。1)アミロイドベータが、DNA依存的プロテインキナーゼ(DNA-PK)活性に及ぼす影響を調べる。ニューロン培地へのアミロイドベータの添加により、ニューロンにDSBが蓄積することをリン酸化ヒストンH2AX(ガンマ-H2AX)、あるいは53BP1フォーカスを定量して確認し、その原因がDNA-PK活性の抑制にある可能性について明らかにする。2)DSB修復に関わる因子として、DNA-PKに加えてBRCA1タンパク質に着目し、アミロイドベータ蓄積が、BRCA1発現に及ぼす影響について明らかにする。3)ニューロンがアミロイドベータ作用によるDSB蓄積によって細胞周期に再突入する可能性について明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

DNA依存的プロテインキナーゼ活性の測定実験系の確立に当初の予定以上の労力を要したために、平成28年度中に十分なデータを蓄積できないことが判明した。そこで、経費の一部を次年度に残して、次年度に十分なデータを蓄積する方針とした。

次年度使用額の使用計画

平成28年度に確立した測定実験系を用いて、平成29年度に十分なデータを集積する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A cyclized helix-loop-helix peptide as a molecular scaffold for the design of inhibitors of intracellular protein-protein interactions by epitope and arginine grafting.2016

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara, D., Kitada, H., Oguri, M., Nishihara, T., Michigami, M., Shiraishi, K., Yuba, E., Nakase, I., Im, H., Cho, S., Joung, J. Y., Kodama, S., Kono, K., Ham, S. and Fujii, I.
    • 雑誌名

      Angew. Chem. Int. Ed.

      巻: 55 ページ: 10612-10615

    • DOI

      10.1002/anie.201603230

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 放射線による染色体異常生成とその後の運命について2016

    • 著者名/発表者名
      児玉靖司
    • 学会等名
      日本環境変異原学会第45回大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 小核由来被ばく染色体の細胞周期における移入時期と不安定化の関係2016

    • 著者名/発表者名
      西田拓馬、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] 胎内被ばくによってマウス神経幹・前駆細胞に誘発されるDNA二本鎖切断の解析2016

    • 著者名/発表者名
      白阪耀介、坂口健太、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] 小核におけるDNA二本鎖切断蓄積と主核への取り込み頻度の解析2016

    • 著者名/発表者名
      冨野菜央、白石一乗、杉本憲治、児玉靖司、川喜多愛
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] 放射線によるテロメアシグナル異常に対するアスコルビン酸の影響2016

    • 著者名/発表者名
      坂本佳美、児玉靖司、白石一乗
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] マウスニューロンにおけるX線誘発DNA二本鎖切断の修復能解析2016

    • 著者名/発表者名
      柏木裕呂樹、白石一乗、坂口健太、白阪耀介、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] マウスニューロンにおける非相同末端結合の阻害効果の解析2016

    • 著者名/発表者名
      今岡航、柏木裕呂樹、坂口健太、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] アストロサイトの放射線損傷応答に関する解析2016

    • 著者名/発表者名
      泉谷彬元、児玉靖司、白石一乗
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      JMSアステールプラザ(広島県広島市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [備考] 大阪府立大学大学院理学系研究科生物科学専攻放射線生物学研究室

    • URL

      http://chokai.riast.osakafu-u.ac.jp/~housya6/graduate.html

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公開日: 2018-01-16  

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