研究課題
本研究の目的は、ニューロンにおけるDNA2本鎖切断(DSB)修復能とニューロン死の関係を明らかにすることである。本年度は、ニューロンにおけるDSB蓄積とアポトーシス誘導によるニューロン死の関係を神経幹/前駆細胞(NSPC)とNSPCから分化させたニューロンを比較して調べた。はじめに、ICRマウス胎児(14.5日齢)線条体より採取したNSPCをニューロンに分化させる培養方法を確立した。この培養法では、増殖因子等を添加したneurobasal培地でNSPCを48時間接着培養することにより、高い分化率(82.4%)でニューロンが得られた。一方、ニューロンへの分化過程において、アポトーシスが高率(37.0%)に生じることも分かった。次に、NSPC及びニューロンについて、X線(1Gy)誘発DSBの経時的(10分~12時間)な修復速度を線維芽細胞(MEF)と比較して調べた。その結果、NSPCとニューロンはどちらもMEFに比べて修復速度が速いことが分かった。そこで、DSB修復で主要な役割を担うDNA依存的プロテインキナーゼ(DNA-PK)活性を調べたところ、NSPCとニューロンはどちらもMEFより活性が高いことが分かった。このことが、NSPCとニューロンでは、MEFに比べて修復速度が速い原因であろうと推定される。さらに、X線被ばく6時間後のp53依存的アポトーシスの誘発を調べた。その結果、X線1Gyにより誘発されるアポトーシスは、NSPCでは8.7%、ニューロンでは25.4%であり、2Gyではそれぞれ12.2%及び34.8%であった。この結果は、ニューロンがNSPCに比べてDSB蓄積によるアポトーシス誘発に感受性が高いことを示している。X線被ばく6時間後はほとんどのDSBが修復されていることから、この結果は、ニューロンではNSPCに比べてDSBの修復誤りが生じやすい可能性を示唆している。
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Journal of Radiation Research
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10.1093/jrr/rrx089
http://chokai.riast.osakafu-u.ac.jp/~housya6/graduate.html