研究課題/領域番号 |
16K12604
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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研究分担者 |
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
井上 広滋 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (60323630)
遠藤 智司 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任准教授(テニュアトラック) (30748934)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / マイクロビーズ / 二枚貝 / 消化管 / 蛍光ビーズ / 疎水性有機汚染物質 |
研究実績の概要 |
本年度はイガイへのマイクロプラスチックの取込と、イガイへの疎水性有機汚染物質の生物濃縮機構の解明を目指して研究を行った。マイクロプラスチックのイガイへの取込については、コンテナー選び、水量、曝露時間、ビーズのサイズ選択など基本的な検討から研究を開始した。175um(マイクロメーター)の着色ポリエチレンビーズを曝露させた実験の結果、イガイ消化管内にプラスチックビーズが取り込まれること、2日程度の滞留時間であることがわかった。さらに、0.05 um, 1 um,10 um,90 umのポリスチレン製ビーズを使い、イガイ消化管内への滞留時間や組織へのマイクロプラスチックの移行を観察する手法の検討を行った。解剖して外套膜、消化腺、生殖腺などに分けてから、各組織中のマイクローズを観察する手法を検討したが、イガイについては癒着があり、各組織の単離が困難であるため、この手法の適用が困難であるとことがわかった。それに代わり、糞を経時的に捕集し、糞中の蛍光ビーズを蛍光顕微鏡で計測する方法を開発した。擬糞(消化管を通らずに排出されるもの)と糞の識別などの課題があるが、本方法で今後の研究を進めることとした。糞中から検出可能なマイクロプラスチックの大きさは1 umが下限であることが実験より確認された。 イガイへの疎水性有機汚染物質の生物濃縮機構については、魚類及び二枚貝における生物蓄積モデルに関する既存研究を精査し、プラスチック摂食がない平時におけるモデルを構築した。 濾過速度の異なる2種のイガイ(ムラサキイガイ、ミドリイガイ)、疎水性の異なる複数の有機汚染物質のイガイへの生物濃縮の観測、懸濁物や溶存相中の有機汚染物質の濃度から、疎水性が極めて大きな化合物(オクタノール-水分配係数の対数値が7以上)の場合に餌(懸濁物)からの取込の寄与が主要になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イガイへのマイクロプラスチックの取込と消化管内への滞留時間を計測する方法を確立し、この手法の応用で成果が得られる見通しが得られた。汚染物質のイガイへの蓄積については、プラスチックが媒介しない場合の汚染物質の蓄積機構を物質の疎水性や生物の特性との関連で整理できた。全体としては目的に向かって順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
・イガイへのマイクロプラスチックの取込については、イガイの大きさ、マイクロビーズの大きさと暴露濃度の異なる条件で、実験を行い、それらのパラメータと消化管内での滞留時間の関係を明らかにする。 ・魚類についても同様な手法でマイクロプラスチックの取込を検討する。 ・野外の魚貝類について消化管内のマイクロプラスチックの存在量を計測する。 ・プラスチック摂食がある場合についての汚染物質の生物濃縮モデルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者(井上先生)に配分した経費のうちで人件費に使用する分について、人件費計算見込額と差額が生じ、7901円の繰り越しが生じてしまった。また、分担者(水川先生)に配分した経費のうちで物品費に使用する分について、購入した物品の金額が想定より安かったため821円の繰り越しが生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度にそれぞれの当該分担者に昨年度からの繰り越し分もそれぞれ人件費、物品費として使用していただく。
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