研究課題/領域番号 |
16K12607
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
久留主 泰朗 茨城大学, 農学部, 教授 (60272118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化ラジカル / 自然突然変異 |
研究実績の概要 |
平成28年度は多様な環境で生育する微生物を用いて細胞内の8-OH-dG の生成と抑制に関し、以下の研究項目を実施した。(1) さまざまな培養温度における8-OH-dGの蓄積量と自然突然変異率の解析:使用菌株の培養特性を考慮しながら増殖可能温度を設定し、それらの温度範囲(至適温度と低温)で増殖させ適当な培養時期(対数増殖期、定常期)に菌体を回収し8-OH-dGの定量を実施した。また各時期における自然突然変異率についてリファンピシン耐性を指標に測定したところ、いずれの細菌も至適温度より低温培養時において細胞内の8-OH-dG量が増大した。しかしながら、低温培養時において各微生物の自然突然変異率についてはいずれも顕著な増大は見られなかった。一方、酸素無添加培養時における絶対嫌気性細菌はいずれも低温培養時において至適温度培養時より細胞内の8-OH-dG量が増大し、細胞内における酸素濃度が極めて低い場合でも細胞内では酸化ラジカル反応により8-OH-dGが生成されていることが判明した。 (2) 8-OH-dGの分解に関わるMutTおよび除去に関わるMutM,MutYの温度特性に関する解析:使用菌株染色体からMutTをクローニングしすることを試みた。Bacillus subtilis 168、Escherichia coli K12はすでに上記3遺伝子が同定されているが、Bacillus subtilis 168由来のMutT遺伝子は常時サイレントであることが判明した。また、絶対嫌気性細菌であるLactobacillus reuteri、Clostridium acetobutylicum からMutT遺伝子のクローニングを試みたがいずれのホモログ遺伝子も遺伝的に大腸菌mutT変異株を相補しないことから、絶対嫌気性細菌においては別の機構により酸化ラジカル反応を抑制していると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画との相違点を以下に列挙する。 1)さまざまな微生物を用いて8-OH-dG の生成と抑制に関し、酸素発生型細菌であるSynechocystis sp. PCC6803、深海由来低温菌であるPseudoalteromonas spおよびPsychrobacter spについて未着手である。 2)海洋における低温環境での微生物中の8-OH-dGの蓄積の解析において、海水試料のサンプリングについて未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き以下の研究項目を実施し、エフォート率を増やし研究を加速させる。 1)さまざまな培養温度における8-OH-dGの蓄積量と自然突然変異率の解析 2)8-OH-dGの分解に関わるMutTおよび除去に関わるMutM,MutYの温度特性に関する解析 3)日本沿岸地点からの試料採取と8-OH-dGの蓄積量の測定 4)深海からの試料採取と8-OH-dGの蓄積量の測定
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画において使用する菌株の安定的培養法の確立が遅延し培養に関わる物品費の購入が出来なかったこと、酸化損傷塩基の定量に関わる研究が遅延し同定量用物品費の購入が出来なかったことの2点による。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画の内容を全て実施すべく、次年度は当該研究全体を加速させる。
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