研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度に引き続き多様な環境で増殖する微生物を用いて、細胞内の8-OH-dGの生成と抑制に関して以下の研究項目を実施した。使用菌株は次の略号で示す。EC:Escherichia coli K-12, BS:Bacillus subtilis 168, SP:光合成細菌Synechocystis sp. PCC6803, CA:絶対嫌気性菌Clostridium acetobutylicum ATCC824, LR:偏性嫌気性菌 Lactobacillus reuteri JCM112, PS:深海由来低温細菌Psudoalteromonas sp. PS1M3。平成30年度は、さらに追加としてPSより低温増殖能が高いAP:深海由来低温細菌Psudoalteromonas sp. APM04株を用い、低温環境で増殖する微生物の解析に注力した。(1) 酸化損傷塩基8-OH-dGの細胞内蓄積量と自然突然変異率の解析:追加した深海由来低温細菌APにおいてもPSと同様に至適温度より低温培養時において細胞内の8-OH-dG量が増大した。しかしながら、いずれの細菌においても低温培養時における自然突然変異率は顕著な増大は見られなかった。(2) 8-OH-dGの分解に関わるMutTおよび除去に関わるMutM,MutYの温度特性に関する解析:光合成細菌SP, 深海由来低温細菌PS及びAPからmutT遺伝子を同定し、同遺伝子産物の酵素特性を調べたところ、いずれも大腸菌EC由来mutT遺伝子産物より8-OH-dGTPに対する基質特異性が高いことが判明した。 以上のことから、低温環境においては細胞内の8-OH-dG量が増大しても、mutM及びmutY遺伝子の機能が非常に強力であるために自然突然変異率の増大には繋がらないことが推察された。
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