研究実績の概要 |
昨年度確立した肥満を基本病態としたアレルギー性喘息モデルを用い、リン系難燃剤リン酸トリス(2-ブトキシエチル)(TBEP)の影響を検討した。C57BL/6J雌雄マウスに対し、耐容一日摂取量(TDI: Tolerable Daily Intake) 2μg/kg/day相当量となるよう調製したTBEP混餌高脂肪飼料(脂肪分56.7%カロリー比)を、5-20週齢の間自由摂取させた。肥満が成立した12週齢よりovalbumin (OVA) 10 μg/50μL/mouseを隔週で計5回、気管内投与した(対照群にはPBS(-)を処置(Vehicle群))。OVA最終投与48時間後に気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、血清中ホルモン濃度(Leptin, Adiponectin, Insulin)、縦隔リンパ節の総細胞数およびその構成と活性の変化を検討した。その結果、雄性マウスでは、Vehicle+TBEP(+)群に比し、OVA+TBEP(+)群でBALF中マクロファージ数の有意な増加を示した。一方、雌性マウスでは、TBEP曝露による喘息病態の有意な変化はなかったが、Insulin濃度はOVA+TBEP(+)群で抑制傾向を認めた。縦隔リンパ節の解析では、雄性マウスにおいて、Vehicle+TBEP(+)群、OVA+TBEP(-)群に比し、OVA+TBEP(+)群で総細胞数の増加傾向が観察された。また、OVA刺激下の培養による細胞増殖能は、Vehicle+TBEP(+)群、OVA+TBEP(-)群に比し、OVA+TBEP(+)群で増加または増加傾向を示したが、サイトカイン産生に変化は認めなかった。一方、雌性マウスにおいては、総じて明確な変化は認められなかった。これより、難燃剤曝露は肥満を基本病態とするアレルギー性喘息の病態を亢進し、その影響には性差がある可能性が示唆された。
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