研究課題/領域番号 |
16K12615
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北條 俊昌 東北大学, 工学研究科, 助教 (10708598)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Anammox反応 / 従属栄養脱窒反応 / 窒素負荷 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究成果は以下の通りである。 1.Anammox付着膜膨張床(AAFEB:Anammox attached film expended bed)型SAD(Simultaneous Anammox and Denitrification)プロセスの運転性能評価:UASB反応槽に嫌気性グラニュールを接種してAAFEB反応槽を立ち上げ、窒素負荷を5から40gN/L/dに上昇させた長期連続実験を行った。窒素負荷によらずTN除去率は常にAnammox反応の理論的最大値(89%)に近い値を維持した。低窒素負荷条件ではAnammox細菌と従属栄養細菌の共存により脱窒が進行しNH4+とNO2-、NO3-とNH4+の反応比はAnammox反応の理論値に比べて低かったが、高窒素負荷条件ではAnammox反応の優占により反応比も理論値に近くなった。 2.基質濃度が及ぼすAnammox運転の安定性の検討:基質の窒素濃度を変えた活性試験の結果、窒素負荷の上昇に従いAnammox汚泥の最大比活性の値は0.37から0.68gN/gVSS/dに上昇し、基質濃度への耐性が高くなった。Anammox細菌が長期連続実験により高窒素負荷環境に馴致されたこと、グラニュール汚泥のVSS/SSの増加から汚泥内の微生物群集密度が増加したことが考えられた。 3.高基質濃度によるAnammoxグラニュールへの影響:長期運転と窒素負荷の上昇に伴い槽内VSS濃度は49.8から62.1g/Lに増加した。槽内で培養されたAnammoxグラニュール汚泥は従来のAnammoxグラニュールと比べて高い沈降性能を有し高い上向流速度においても槽内の微生物量を保持できた。 以上の結果からAAFEB反応槽の高窒素負荷廃水の処理への適応可能性を明らかにし、従属栄養脱窒細菌との共生による高効率窒素除去技術の開発に寄与する有用な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、まずUASB反応槽に嫌気性グラニュールを接種しAAFEB反応槽を立ち上げ、長期連続処理実験によりその処理特性や管理ノウハウ等の基礎的知見を得た。 また、回分実験により基質濃度がAnammox運転の安定性に及ぼす影響を検討した。 さらに、長期連続処理実験において、窒素負荷を変化させた時のSADプロセスの運転特性とAnammoxグラニュールの特性について検討した。 以上のことから、当初の研究実施計画に対して、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として、平成29年度には以下の3つの課題に取り組む。 (1)長期運転における有機物濃度(SMP、EPS、エタノール)によるAAFEB型SADプロセスへの影響の検討:実験期間における反応槽の運転状況により、適切に有機物及び硝酸性窒素を添加することで、これらの要素が反応に及ぼす影響を検討する。また、硝酸性窒素や有機物の添加の有無による処理性能への影響も評価する。 (2)SADプロセスによる窒素除去過程を数式化し、運転管理方式のさらなる最適化:ここまでに得られた研究成果に基づき、SADプロセスの数式化・モデル化を行う。また、各運転条件における窒素除去と微生物の群集変化への影響をシミュレーションする。窒素除去効率の最大化、汚水処理費用の削減、水処理プラントの緊急措置の増強、汚水浄化性能を保証しつつ運転管理コストの抑制などを同時に可能とする運転管理手法の開発に有用な指針を提供する。 (3)混合培養系微生物の群集変化についてAnammox細菌と従属栄養細菌の群集構造の解析:AAFEB反応槽における長期運転期間における混合培養系微生物の群集変化についてq-PCR、FISH、SEMなどの分子生物学的手法を用いて主要なAnammox細菌と従属栄養細菌の群集構造を解析し、反応系で優位に機能している微生物群の特定を行う。
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