研究課題/領域番号 |
16K12617
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐麻 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (00577489)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 逆浸透膜 |
研究実績の概要 |
既存の逆浸透膜(RO膜)を凌駕するRO膜を開発するためには、RO膜による除去率が低い溶質の膜透過メカニズムを解明し、活性層の化学構造に関する明確な開発指針を作成することが必要である。そこで、本研究の目的を、“活性層と溶質の親和性”を定量評価する新技術を確立することに設定した。本研究では水晶振動子マイクロバランス(QCM)の水晶振動子にRO膜の活性層のみを固定化し、活性層に分配した溶質の重量を直接測定することを試みる。その第一ステップとして、今年度はRO膜の活性層を固定化できていることを確認するために活性層内のカルボキシ基を測定した結果、下記の知見が得られた。 ・初期CsCl濃度を1 mmol/Lから5 mmol/Lに増加して得られた値を比較することで、CsCl濃度がR-COO-濃度に与える影響を検討した。その結果、得られたR-COO-濃度はCsCl濃度に依存せずに一定であった。この結果は、初期CsCl濃度が1 mmol/Lでも式(1)に示したイオン交換反応が十分に起こることを示している。 R-COOH + Cs+(w) → R-COO-Cs+(p) + H+(w) (1)
・初期CsCl濃度1 mmol/LでpH4.0~9.0における R-COO-濃度を求めた。QCMを用いて測定したR-COO-濃度は既存のラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いて測定した結果と同様の挙動を示し、さらに両手法の結果はよく一致していることが分かった。この結果から、QCMを用いた本手法は簡易にRO膜の電荷密度を測定する手法として有効であることが実証された。また、本手法により、ポリアミド活性層が水晶振動子に固定されていることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に得た研究成果から、本手法により、ポリアミド活性層が水晶振動子に固定されていることを確認できた。この成果は、本研究の最終目標である「有機汚染物質と活性層との親和性定量評価を行い、溶質の除去率に及ぼす分配係数の役割を定量的に解明する」を達成するためには欠かせない成果である。よって、本研究はおおむね順調に進展にしていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今回得られた実験手法を用いて有機汚染物質と活性層との親和性定量評価を行い、溶質の除去率に及ぼす分配係数の役割を定量的に解明する。さらに、得られた知見に基づいて、次世代のポリアミド系RO膜の開発や新素材の開発を行う際の指針を提供する。
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