研究課題/領域番号 |
16K12619
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20285191)
|
研究分担者 |
東條 ふゆみ 秋田県立大学, 生物資源科学部, 特任助教 (90758228) [辞退]
福島 淳 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (00181256)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マンガン酸化酵素 / 真菌 / マンガン酸化物 / 資源金属回収 |
研究実績の概要 |
微生物が酵素反応で作り出すマンガン酸化物は層状の微結晶であり、優れた反応特性(金属イオン吸着、酸化、触媒性能)をもつため、環境・資源技術への応用が期待される。本研究では、真菌Acremonium strictum KR21-2株のマンガン酸化酵素をクローニングし、酵母を用いた大量発現系を構築する。そして、マンガン酸化の反応機構を明らかにするとともに、金属回収性能を明らかにすることを目的としている。構築したPichia酵母によるタンパク質発現系を用いてマンガン酸酵素を調製した。培養液上清を濃縮後、HPLCシステムを用いて発現タンパク質を電気泳動的に均一になるまで精製した。これにより4.5 mgの精製タンパク質が得られた。ウサギポリクロナール抗体の作製を試みた結果、10万倍希釈した抗血清(プロテインA精製標品)でも抗原に対して十分な反応性が検出され、力価の高い抗体を取得できた。精製酵素を用いてマンガン酸化反応の解析を検討した結果、0.6 mM Mn(II)イオンを基質とした場合3時間以内に酸化物に変換されることが示された。生成したマンガン酸化物は2.5~3μmの比較的均一な粒径の球状であった。0.6 mM Zn(II)イオンを添加して影響を調べた結果、マンガン酸化反応に対する阻害は認められず、モル比で30%のZn(II)がマンガン酸化物中に取り込まれた。マンガン酸化菌の培養液を用いた試験では高濃度のZn(II)が混在するとマンガン酸化は大きく阻害されることから、非常に興味深い結果であるといえる。マンガン酸化酵素によりマンガン酸化物を形成させながら、混在する有用金属を回収できることが示唆された。本研究により、生物的マンガン酸化物生成反応を均質な酵素反応液中で解析することが可能になり、酵素反応機構の解明に向けて詳細な検討が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標はPichia酵母発現系を用いて組換えタンパク質を大量調製すること、及びマンガン酸化酵素のポリクロナール抗体を取得してマンガン酸化反応による酸化物構造体の生成過程を解析することであった。また、酵素反応により他の金属イオンの回収可能性を示すことであった。4.5 mgの精製タンパク質が得られ、高力価のポリクロナール抗体を取得することができた。また金属イオンの回収可能性も十分に示すことができた。一方で、当初はこの抗体を用いて、マンガン酸化反応で生成する酸化物構造体について酵素タンパク質の局在性をすぐに検討する予定であった。しかし以下に述べるように、酸化物構造体の生成過程の解析で当初予想できなかった重要な知見が得られたため、研究のアプローチを修正した。1)酵素反応によりマイクロサイズの均一な球状マンガン酸化物粒子が成長すること、2)高濃度金属イオン(0.6 mM Zn(II))存在下でもこの生成反応は阻害されないこと。さらに、3)添加した金属イオンは酸化物構造の一部として取り込まれることである。本研究の課題として、酵素の局在性の検討が残されているが、これらの成果を踏まえて、他の金属イオンが混在する条件で、時間経過とともにどのように酸化物構造体が成長するか、そのとき酵素分子はどこに局在するかを解析することで、酵素によるマンガン酸化物生成機構に関して当初目標を超える成果が得られることが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
金コロイド等で標識した抗体を利用して酵素タンパク質を標識した後、Mn(II)酸化反応を開始することで、酸化物構造体の成長時に酵素分子がどこに局在するか解析する。このとき他の金属イオンを逐次混在させることにより、酵素分子の局在性とともにMn(II)酸化反応がマイクロサイズの酸化物構造のどこで進行しているか解析を試みる。反応液より経時的に採取した試料を透過型電子顕微鏡で観察する他、薄切した後の内部構造を透過型電子顕微鏡でも観察することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
酵素タンパク質の局在性の検討を次年度に実施することになったため。
|