平成29 年度の研究は次の通りに行なった。(1) ナノ粒と高分子の合成:ナノ粒子の合成は球状粒子が約7個結合したパール形状ナノ粒子が気体透過性に有効であることを見出した。さらにそのナノスペースを拡大するため、分岐数、世代数を増やしたナノ粒子が気体透過には効果が高いことを明らかにした。つまり、ナノ粒子の表面修飾とナノ粒子の形状、サイズ制御は、ナノ粒子の凝集を抑制し、粒子コアの形状、表面修飾の枝、末端の構造、分岐数、世代数が気体透過に有効であることを平成29年度は実験結果より明らかにした。さらに、マトリックスに用いる高分子も重要で、気体透過性の低い高分子マトリックスを用いた場合はナノ粒子が持つ気体透過性を妨げるため、PIM系高分子のような高い気体透過性を持つ高分子マトリックスを用いて複合膜を作製することが必須条件であることがわかった。(2)ナノファイバーフレームワーク(NfF)からなる気体分離膜の作成とその評価:気体分離膜の薄膜化は気体透過流量の増加には不可欠であり、そのためナノ粒子を含んだNfF複合膜の薄膜化を検討した。エレクトロスピニング装置を用いNfFは作製した。NfF材料は、有機溶媒に不溶でかつナノファイバー径制御(径は100nm-300nm程度)が可能からなるNfNを作製し、ナノ粒子を含有するナノ粒子含有NfF複合膜の作製を試みた。詳細は割愛するが、5μm程度の薄膜化は可能となったが、目標とした1μm以下の膜厚には至らなかった。今後、さらなる検討が必要である。(3)Maxwell Modelを用い気体透過実験の理論解析:ナノ粒子が持つナノスペースの気体透過性は複合膜に比べ約10倍、高分子マトリックスに比べると約30倍の気体透過性を示すことが、シミュレーション解析から明らかとなり、表面修飾ナノ粒子が気体透過性を向上させる上での有効なツールになることが明らかとなった。
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