研究課題
福島第一原子力発電所の事故により、土壌中などに吸着した放射性Csの効率的な除染方法の開発が急務である。汚染土壌を加熱してCsを脱離させる除染方法は、廃棄物の発生量が少ない反面、1000℃以上の高温が必要と言われており、エネルギーコストを考えると、より低温でCsを脱離させる技術の開発が必要である。本研究は、Csのイオン化エネルギーが3.9 eVと全元素中最小であるという特異性に着目し、電界中で土壌を加熱することにより、CsをCs+イオンとして選択的に脱離させる手法について検討した。まず、標準試料として塩化セシウム(CsCl)の脱離挙動について調べた。ルツボに+100 V(電界強度は670 V/m)以上の電圧を印加し加熱すると、380℃付近から表面電離現象によりCs+の脱離が観測され、脱離するCs+イオンと中性Csの比は415℃で最大となった。イオンと中性の脱離強度比の温度依存性を理論的に解析した結果、415℃におけるCs+脱離強度の極大は、表面の仕事関数変化によることがわかった。また脱離したCsを定量分析した結果、Cs+イオンの脱離収率は中性Csの約10倍であることがわかった。以上の結果から、CsClを電界中で加熱すると、CsClの融点(645℃)より200℃以上低い温度でCs+が脱離することを明らかにした。次に、実際の福島県産粘土鉱物にCsを吸着させた試料について検討を行った。通常の加熱では、800℃までセシウムは全く脱離しない。一方、ルツボに+100 Vを印加して加熱すると、Csだけが選択的にCs+として脱離した。そこで、460℃で2時間加熱した後の残渣を定量分析した結果、加熱前に比べて、Csの含有量は約13%減少した。以上の結果から、電界中で加熱することによって、粘土鉱物からCsの一部をCs+イオンとして選択的に脱離させることができることを明らかにした。
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