研究課題/領域番号 |
16K12624
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池 道彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40222856)
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研究分担者 |
惣田 訓 立命館大学, 理工学部, 教授 (30322176) [辞退]
黒田 真史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20511786)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 1,4-ジオキサン / バイオレメディエーション |
研究実績の概要 |
平成29年度は、環境試料中の1,4-ジオキサン(DX)分解細菌の集積・優占化に利用可能な炭素源の探索に注力した。DX分解がエーテル結合を開裂する特殊な分解経路で行われることに着目し、6種類の候補炭素源 (DX、テトラヒドロフラン (THF)、1,3,5-トリオキサン (TX)、ジエチレングリコール (DEG)、エチレングリコール (EG)、1,4-ブタンジオール (BTD)) を候補として試験に供した。300 mL容三角フラスコに、DXを含む排水の処理設備から取得した懸濁物質(終濃度50 mg-TSS/L)、各炭素源(終濃度100 mg-C/L)、無機塩培地を全量100 mLとなるように加え、好気的に培養し (28℃、120 rpm)、週に一回、一部の培養液を新しい培地に植え継ぎ、合計8バッチの集積培養を行った。集積中は、炭素源濃度 (DX、THF、TX)、全懸濁物質 (TSS) 濃度および溶存性有機炭素 (DOC) 濃度を測定して各炭素源の分解状況をモニタリングするとともに、偶数バッチ終了時の培養液を用いてDX分解能を評価した。 全8バッチの集積培養の結果、TXは終始分解されなかったが、DXは6バッチ目、THFは3バッチ目から分解が確認されるようになり、DEG、EG、BTDは1バッチ目から良好に分解された。また、集積に用いた懸濁物質 (初期試料)、および2、4、6、8バッチ目の培養液を用いたDX分解試験の結果、DEG、EG、BTDを炭素源に用いた集積系においては、初期試料と比較してDX分解能が低下したのに対し、DXおよびTHFを炭素源に用いて集積培養を行った場合にはDX分解能が向上することが観察された。以上の結果から、THFは環境試料中のDX分解細菌を集積することができることが示唆され、細菌による利用性も踏まえると、THFはDX分解菌の集積に用いる炭素源としてDXより優れていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究で見出したTHFは、実環境から採取した微生物試料からも効果的に1,4-ジオキサン分解細菌を集積することができることが示されており、特異的活性化剤を用いた1,4-ジオキサン汚染のバイオレメディエーションの実用化に向けて非常に有用であると考えられることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
テトラヒドロフラン(THF)の添加により集積される細菌群集について、16S rRNA遺伝子および1,4-ジオキサン分解に関与することが知られる可溶性鉄 (II) モノオキシゲナーゼ (SDIMO) 遺伝子を標的としたアンプリコンシーケンス解析を行うことにより、生物の分類と分解遺伝子の系統の両観点から特徴を明らかにし、THFの1,4-ジオキサン(DX)分解細菌を集積する基質としての有効性を評価する。また、下水処理場の活性汚泥等の他の微生物源に対してもTHFを用いることでDX分解細菌を集積可能であるかを検証する。
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