• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

地衣類における金属蓄積・保持機構の解明と放射性汚染物質降下量評価への適用

研究課題

研究課題/領域番号 16K12627
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

土肥 輝美  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島環境安全センター, 技術副主幹 (50469821)

研究分担者 高橋 嘉夫  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
大村 嘉人  独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40414362)
町田 昌彦  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主席 (60360434)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード地衣類 / セシウム / ストロンチウム / ヨウ素 / EXAFS / 第一原理計算
研究実績の概要

平成28年度はサブテーマ「地衣類の形態的・構造的特徴による元素の保持特性の違い」を中心に研究を実施した。地衣類は、様々な金属や放射性物質を蓄積・保持することが知られており、環境モニタリング材料の一つとして活用されているが、地衣類の形態や生理的特性に関連してそれらがどのように蓄積・保持されるのか、ほとんど分かっていない。地衣類中の放射能濃度は、核種によって差異が生じることが報告されており、元素種によって地衣類中への取込み・保持メカニズムが異なる可能性が考えられる。また、地衣類中の同一核種濃度の差異については、生育場所における着生方位などの生態的な環境条件や地衣類の種による形態 ・内部構造・生理的な違いなどが影響するものと考えられる。ここで、生態的な差異を排除すれば、地衣類における着目元素種の蓄積・保持能力について、形態的・構造的・生理的特徴による違いが見られることが予想される。本研究では、表面形態および内部組織構造の特徴が明瞭なウメノキゴケについて、被ばく評価上重要なCs, Sr, I(安定元素)の取込み試験を行った。試料は、平成28年に岐阜県で採取したものを使用した。地衣類中のCs濃度はSr濃度の3倍程度高い値を示した。電子線マイクロアナライザにより取込試験後の地衣類組織断面構造の元素分析を行った結果、Cs, Iは皮層への蓄積が認められたのに対して、Srは髄層中に蓄積が認められ、元素種によって地衣類中で保持される場所が異なることを見出した。取込み試験後の試料については、放射光蛍光X線マイクロビームを用いたX線吸収微細構造(EXAFS)の解析により、地衣類中のCs, Sr, Iの近傍情報を取得した結果、水和物や有機分子化合物として存在する可能性が示された。Csと地衣類特有の一部の二次代謝物について、第一原理計算を行い、安定な吸着構造を示すエネルギー差を持つことを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究で着目元素の蓄積・保持能力を明らかにするための、形態や組織構造の明瞭な地衣類種の選定、生体内での元素局在部位の可視化、X線吸収微細構造解析による化学結合状態などの情報取得、計算科学の適用による着目元素種と生体物質との結合安定性の評価までの一連の実験系および評価体制を確立した点で一定の成果を得られたと考えている。種間の差異・表面形態の差異による元素濃度の比較を行うために、ナミガタウメノキゴケとウメノキゴケで各元素の取込み試験を行ったが、濃度測定の一部が終了していない状態である。早急に濃度測定および種間比較を行う予定である。濃度測定の前処理として実施する試料の酸分解・希釈過程は多くの作業工程と時間を要することから研究の進捗に影響を及ぼす。今後、前処理過程の簡素化が期待できるLA-ICP-MSの適用を検討するなど、実験系を改良していきたい。

今後の研究の推進方策

本研究では、地衣類のCs, Sr, Iの蓄積・保持に関与する物質を明らかにするために、地衣類の形態的・構造的・生理的な特徴による元素の保持特性の差異を見出すことが重要である。そのため平成29年度は生理的特徴が明確なシロムカデゴケを含む数種を用いて、平成28年度に確立した実験系・評価体制を適用し、Cs, Sr, Iのそれぞれの蓄積濃度および蓄積部位の違いの有無を調べる。生体の基本単位である細胞壁を構成する主要成分であって金属イオンと結合する性質をもつキチンとCsについて第一原理計算を行い、結合安定性の評価を試みる。

次年度使用額が生じた理由

以下の理由により、使用額に差が生じた。(1)購入を予定した「恒温振とう培養器」および「恒温乾燥機」を、温度設定以外に光合成を行う生物を扱う上で必要となる明条件・暗条件も設定できる「恒温培養器」に変更し、既に所有していた小型の振とう器を恒温培養器内に設置することで、同等程度の実験条件を整備し且つ支出額を低減させることができたため。(2)研究打合せや試料採取に係る旅費を、運営費交付金事業の出張日と同一日としたことにより、旅費支出額を低減させることができたため。

次年度使用額の使用計画

地衣類の濃度測定前処理用に使用する試験消耗品、放射光分析用物品、次年度使用予定となる試験試薬類などの試験用物品類を整備するとともに、次年度計画する試料採取地に応じた旅費の支出に充当する計画である。

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi