研究課題/領域番号 |
16K12629
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
西岡 昭博 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (50343075)
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研究分担者 |
落合 文吾 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (20361272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非晶性セルロース / リアクティブ粉砕 / プラスチック |
研究実績の概要 |
小テーマ①『セルロースのリアクティブ粉砕の可能性』 本検討項目では申請者の独自手法である「粉砕にセルロースの非晶化技術」を用いることによるセルロースのリアクティブ粉砕の可能性を明らかにする。初年度は、その前段階として、第一にセルロースを非晶化することで、本当に効率的な化学的な変性が可能になるのかを明らかにした。具体的には、ヨウ素触媒存在下でのプロピオン酸無水物及び酪酸無水物を用いたセルロースのエステル化において、非晶化したセルロースの方が結晶性セルロースよりも2倍以上反応速度が速いことを明らかにした。また、無水酢酸と上記の酸無水物を混合した混合エステル化では、非晶化したセルロースの方がより均等にエステル化されることが分かった。以上から、本研究で用いたセルロースのエステル化において、非晶化が高速化に有効であることを明らかとした。 テーマ②『プラスチック材料への適用の可能性』 ナイロン11が強誘電性を示すにはδ’型(擬六方晶系)という結晶系に制御することが重要である。今年度は、様々な臼温度条件下でナイロン11を本手法で粉砕し、粉砕条件の模索及び得られた試料の物性変化について検討を行った。具体的には粉砕後のDSCによる結晶化度測定、広角X線回折による結晶構造解析を行った。実験の結果、温度制御粉砕により得られたナイロン11の結晶化度は粉砕前と比較し低下することが確認された。さらに粉砕後のナイロン11の広角X線測定の結果より回折ピーク数や回折ピークから解析された格子間距離から結晶系の断定も行った。この結果から低温下(臼温度-5oC)で粉砕した試料において、δ’型(擬六方晶系)への制御が可能なことが示された。この結果はナイロン11の結晶系を温度制御粉砕により制御できることを意味しており興味深い結果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的である温度制御粉砕によるナイロン11の結晶系制御に関する結果が順調に得られていること、セルロースのリアクティブ粉砕に先立った非晶性セルロースの反応性に関する結果が順調に得られたことを総合的に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究において非晶性セルロースは結晶性セルロースと比較して化学的反応性に優れることが明らかになった。今後は粉砕過程においてセルロースの非晶化と化学反応を同時に行う「リアクティブ粉砕」の実験を進めることで当初の目的の達成を目指す。このような検討を系統的に進めることで本研究は当初計画通りに進むと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は最終目標である粉砕によるリアクティブ粉砕の前段階の実験として非晶性セルロース単体の反応性に関する実験検討を行った。そのためリアクティブ粉砕に向けた粉砕システムの改造に向けた予算が予想よりも少なくなったため初年度予算の執行が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は本研究の主目的である粉砕過程におけるリアクティブ粉砕の実験を実施するため、粉砕システムの改良、開発が開始されるため、今年度は本検討に残予算を執行する。また最終年度であるため成果の公表に関わる学会参加、発表に関わる旅費等について予算を執行する。
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