〇小テーマ①『セルロースのリアクティブ粉砕の可能性』 今年度は、リアクティブ粉砕によるマレイン酸無水物を用いたセルロースのエステル化について検討を行った。リアクティブ粉砕後の試料の反応性を明らかにするためFT-IRによる官能基評価を行った。リアクティブ粉砕により得られた試料ではエステル由来のピークが確認された。またリアクティブ粉砕の回数を増加させることで、エステル化がより進行することが示唆された。一連の検討の結果、本研究で提案したリアクティブ粉砕によりセルロースのエステル化の可能性が見出せた。 〇小テーマ②『プラスチック材料への適応の可能性』 本研究の手法を様々な臼温度条件下でナイロン12、PET、PLAに対して適応した。具体的には粉砕条件の影響や得られた試料の物性変化について検討を行った。粉砕後のDSC及び広角X線回折による結晶化度測定を行った結果、温度制御粉砕により得られた各試料の結晶化度は粉砕前と比較し、低下することが確認された。また、低温下(臼温度-5度)で粉砕した試料において、より低結晶化することが示された。以上から、リアクティブ粉砕による多種のプラスチック材料の変性の可能性が示唆された。 〇小テーマ③『リアクティブ粉砕によるセルロース複合材料の開発』 高分子材料と非晶性セルロースを複合化した材料の基礎物性を明らかにし、申請者が提案するリアクティブ粉砕によるセルロース複合材料の開発の可能性を検討する。ここではポリプロピレン/マレイン酸変性ポリプロピレン/セルロースを複合化し、機械的物性への影響を明らかにした。複合材料の一軸引っ張り試験を行った結果、非晶性セルロースを添加した系では結晶性セルロースを添加した系にはない延性的な性質を示した。この結果はリアクティブ粉砕により得られたセルロースとポリプロピレンを複合することで、物性向上の可能性を示唆するものである。
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