研究課題/領域番号 |
16K12633
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
上村 忍 香川大学, 工学部, 准教授 (60423498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイブリッド / 酸化グラフェン / 水熱法 / 脱塩薄膜 |
研究実績の概要 |
海水淡水化処理のための機能性脱塩フィルムを目指し,本年度は,超音波及び水熱処理によるナノ構造制御された酸化グラフェン―窒化炭素ハイブリッドフィルムの作製とその脱塩能評価を試みた. 窒化炭素は500℃以上での加熱により合成される無機高分子であり,一級アミノ基を有するもののすべての溶媒に対し不溶である.そこで,水熱処理により水溶液へナノ分散させ,通常凝集体で得られる窒化炭素を二次元のナノシート化することに成功した. このナノシート分散窒化炭素水溶液と,多くの水酸基,カルボキシル基を有する酸化グラフェンを混合することにより,水素結合性のハイブリッドフィルムを作製した.単なる超音波処理による混合においても,窒化炭素と酸化グラフェンはほぼ交互に積層していることが原子間力顕微鏡観察などにより確認された.酸化グラフェン,還元酸化グラフェンでのイオン透過性と比較し,得られたハイブリッドフィルムはイオン透過性が低いことが確認され,脱塩フィルムとしての応用が期待される.しかしながら,作製されたフィルムはいずれも長時間溶液浸漬によりフィルムの膨潤に伴うイオン透過性の向上,フィルムの剥離などがみられ,耐久性のあるフィルムの作製には窒化炭素―酸化グラフェン間の架橋が不可欠であることが示唆された. またフィルム厚や窒化炭素混合比の相違によるイオン透過性の評価から,現ハイブリッドフィルムにおける最適なフィルム厚,混合比を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,静電相互作用を利用したハイブリッド化であったが,窒化炭素の表面電位変化は通常のpHではほとんどみられなかったことから,水素結合性のハイブリッド化を試みた.ナノ構造制御の点では不向きな水素結合性のハイブリッド化ではあるものの,超音波処理後のナノ構造評価では酸化グラフェン上に窒化炭素が積層されていることから,単なる超音波処理でも交互に積層したハイブリッドフィルムが期待された.得られたハイブリッドフィルムは,酸化グラフェンよりも良好な特性を示していたことから,窒化炭素含有の効果が表れていることが示唆される. また当初計画においては,酸化グラフェンのエポキシ基とのメラミン,メレムへとの反応であったが,反応溶液への分散が不十分であったため,より効果的な反応を行う必要性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
反応性の高い化合物を利用することにより,酸化グラフェン―窒化炭素の明確な架橋を行い,架橋フィルムのナノ構造制御及び物性などの評価を試みる.窒化炭素は一般的にヘプタジン環で構成されているが,トリアジン環で構成されている化合物も近年報告されており,構成骨格の相違によるマクロ構造や機能の相違から,脱塩能の相違が期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は2年計画であり,次年度は架橋型のハイブリッドフィルムの合成とその脱塩フィルムとしての物性,機能評価を行う.次年度計画はほぼ計画通りの研究の執行である.
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次年度使用額の使用計画 |
分子間相互作用を利用したハイブリッドフィルムの作製をさらに発展させ,次年度は化学修飾による窒化炭素と酸化グラフェンの架橋とその物性評価を実施する.主に酸化グラフェンのハイブリッド化における化学反応及び評価に必要な試薬,ガラス器具,評価などで必要な補助人員に関する人件費,外部への測定依頼のための費用などを計上する.
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