研究課題/領域番号 |
16K12634
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
伊村 くらら お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (60707107)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金 / ナノ結晶 / 形態制御 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
本研究では高機能な異方形態ナノ触媒における再生システムを実現することが最終的な目的である。そのためにまず平成28年度は、高い触媒活性がのぞめる異方形態を有した金ナノ結晶の調製と担持手法の確立を行った。ナノ結晶調製には、両親媒性化合物が持つ貴金属ナノ結晶への配位・吸着特性を最大限に活用していくことを主軸とした。これまでに得てきた知見から、異方形態金 ナノ触媒の作製には4 級アミン両親媒性化合物が存在する液中でのボトムアップ成長が最適と考えた。よって本研究ではセチルトリメチルアンモニウム塩やメラミン、新たに合成して得た長鎖アミン誘導体らを保護剤として用い、塩化金酸を還元してナノ結晶を成長させた。得られた金結晶は、樹枝状や金平糖状の異方構造を持つことが高分解能透過型電子顕微鏡像から確認された。 つぎに、得られたこれらの異方形態金ナノ結晶についてアルミナならびにシリカ表面への担持を行った。この段階で、調製時に用いた保護剤分子の種類、特に末端分子構造の違いに依存して金ナノ結晶の担持効率に大きな違いが見られた。そこで担持条件の検討を行い、分子種類によらず90%以上のナノ結晶が担持される条件を策定した。さらにより高い効率で担持された異方形態ナノ結晶を得るために、ナノ結晶ボトムアップ成長を担体上で行うことも試みた。得られたナノ結晶形態は担体無しで行ったものと類似するものの、異方成長する最適条件に差異が見られた。この成長機構の解明について、各種パラメータから検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高機能な異方形態ナノ触媒の再生システムを実現するという最終目的に対して、平成28年度はモデルとなる異方形態ナノ触媒の調製に取り組んだ。現在までに、複数の合成ルートによる異方形態ナノ結晶調製に成功しており、現段階での研究進捗は良好であると考える。さらに平成28年度中に行った「担体上での異方ナノ結晶成長」について、その機構の解明を慎重に進めることで、平成29年度に行う「ナノ結晶の形態再生」へと展開できる新たな知見を見出した。これは、本研究の目標達成に向けてきわめて評価できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
結晶形態の維持とその再生手法の開発を行う。触媒特性と結晶形態の相関性は、p-ニトロフェノールの水素化反応と1-フェニルエチルアルコールの酸化反応を行い、紫外可視吸収スペクトルとガスクロマトグラフから評価する。そして、触媒反応後のナノ結晶の形態変化を透過型電子顕微鏡像と表面プラズモン吸収バンドから調べ、さらなる触媒反応を行うことで結晶形態変化が触媒活性へおよぼす影響を体系づける。 最後にアミン化合物の特異な吸着特性を用いて、「ナノ結晶の異方形態の修復手法の確立」を行う。これにはモデルとなる切頂八面体構造といった単結晶粒子のほか、より実際的な触媒反応により球形変化した粒子のそれぞれを用いて検討する。本研究の主眼は結晶表面構造の再生であることから、まず表面の微小な溶解を行い、その上で前年度での研究の知見をいかして(100)面と(110)面を選択的に安定化しながら再成長させる。微細な表面溶解はアミン化合物に臭化物もしくは塩化物を用いることで起こることを、前年度までに明らかにしている。平成29年度における結晶再生はこれをベースにした反応条件から着手し、最適なアミン化合物の選定を行う。得られたナノ結晶は、電子顕微鏡観察および紫外可視吸収スペクトルから確認し、前年度に調製したナノ結晶と同等のものが得られる修復処理条件を探し出す。さらに、前年度での知見に基づいて、再び担持と触媒特性の評価を行う。初段階で作製した異方形態ナノ結晶が示した触媒特性が、形態修復後のナノ結晶でも復元されているかどうかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
担持金ナノ結晶を得る手法を複数検討する中で、当初予定していなかった調製ルートにおいてきわめて良好な結果が得られたことから、平成29年度における検討項目が当初予定よりも増えた。そのために、二か年での研究費配分バランスを見直し、平成29年度使用額を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
ナノ結晶調製と評価のための物品費のほか、研究成果発表のための旅費に用いる。
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