研究実績の概要 |
本研究では、有機半導体などの有機半導体エレクトロニクスの飛躍的性能向上を目的として、2,7-ジアルキルベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-BTBT)-p型半導体、N,N’-ジオクチル-3,4:9,10-ペリレンテトラカルボキシリックイミド(PTCDI-C8)-n型半導体を酸化アルミニウムならびに酸化マグネシウムの単結晶基板上に真空蒸着法により形成し、精密な結晶方位解析とナノスケール形態観察を行い、有機半導体の分子層ヘテロエピタキシャル成長の技術と学理の確立に取り組むと共に、分子層ヘテロエピタキシャル成長技術の有効性を検証・実証する。平成28年度には単結晶酸化物基板ならびに石英ガラス基板上にC8-BTBT層もしくは PTCDI-C8層を形成した結果、X線回折的にはほぼ単結晶級膜が形成された。その成長過程を原子間力顕微鏡により追跡した結果、sapphire基板上に島状成長とその合体により極めて平滑な均一層が形成された後、3次元成長に移行し表面起伏が増大すること、その均一層の厚さは成膜条件によって異なること、基板材料の影響をあまり受けないこと、などが明らかとなった。平成29年度には、詳細な構造解析と形態観察によって、分子間のπ-π結合による分子配列形成と基板上に形成されている原子レベルステップによる運動阻害が成長を制御しているため、基板材料によらず同一の方位が得られたと考えられた。このことは、分子間の水素結合制御によりほぼ完全な単結晶級有機半導体層が形成できると予想される。平成30年度には、C8-BTBT層とPTCDI-C8層の積層体では、ほぼ同様な方位関係が得られるが、積層順序が表面形態と表面エネルギー均一性に大きな影響を及ぼすことが実験的に確かめられた。両層ともに、高さが一定の島状結晶の横方向成長が起こり膜厚15nmにおいて極めて平滑な均一層が形成できるが、それ以上では島状成長が生じ起伏が増大することが明らかとなった。
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