循環共生型地域づくりの施策と経済成長との関係を理論的・実証的に明らかするために、地域事例調査に基づいて、関連施策が地域経済の活性化に寄与する効果を定量的に分析するとともに、中長期的に経済社会システムの変革に寄与する可能性に関し理論的な研究を進めてきた。 前者について、宮城県南三陸町を事例として、地域産業連関表の作成と応用により、循環共生型地域づくり施策の経済効果分析に取り組んできた。平成30年度には、第五次環境基本計画に掲げられた「地域循環共生圏」の概念も踏まえつつ、シナリオの精緻化、最新統計の反映及び政策的含意の検討を加え、分析結果を論文としてとりまとめて、学会誌に投稿した。(31年度4月に掲載が決定した)。 後者については、地域における施策が中長期的な経済社会システムの変化の中で持つ意味と効果について、制度・進化経済学の諸概念を参照しながら理論的に分析する研究を進め、平成29年度までに、進化経済学の概念の応用に係る成果を公表してきた。平成30年度にも、制度経済学及び経済地理学の概念を踏まえて、理論的検討をさらに進めた。 以上によって、「地域循環共生圏」の形成に向けた施策について、低炭素化のみならず物質循環の効果を含め総合的に地域経済の成長に資することを明らかにしたほか、グローカル化に対応して進む多様な空間スケールの取組が共進化していくことにより社会経済システム全体が変化していく可能性を明らかにした。
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