研究実績の概要 |
西オーストラリア疎林の個木分布状況を解析するとともに、分布の幾何学形状の統計的解析手法について検討した。前者については、画像解析による個木の位置情報取得について、ほぼ目処が立つところまできた。後者については、一般極値分布(generalized extreme value extribution, GEV)の指数(extreme value index, EVI)を求めるための手法を考案し、これを提案するに至った。 GEVのパラメーター推定においては、パラメーターの値によっては最尤法が使えないなど、定番の手法がない。諸手法の中では maximum product of spacings (MPS)法がほとんどの場合に収束し誤差も比較的小さいため、我々も種々の統計パラメーター推定をMPS法で行ってきた。MPSは、順序統計にもとづく経験分布関数のスペーシングの積を最小にするものであり、最尤法の密度関数の代わりに分布関数を使うものと解釈できる。我々は、このスペーシングの積について、両端の2つのスペーシングをその平方根で置き換えることにより、誤差(バイアス)を大幅に減らすことができることに気がついた。MPS法では(サンプル数+1)個のスペーシングの積を取るが、我々の手法では、実質上サンプル数に等しい数のスペーシングの積をとることになる。このことにより、理論的にも最尤法と親和性が高くなり、推算値の分布への中心極限定理の適用も、より自然である。結果、MPS法よりも最尤法のより良い近似となる。新方法は、様々なメリットにもかかわらず、推算に要する計算コストはMPSと変わらない。この手法については論文一報を投稿中であり、新たにもう一報準備中である。課題全体としては、予定より遅れることになったが、新たな統計的手法を得たことは大きな成果である。
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