研究課題/領域番号 |
16K12661
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
関戸 知雄 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50301015)
|
研究分担者 |
土手 裕 宮崎大学, 工学部, 教授 (30264360)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | インドネシア / リサイクル / ごみ銀行 |
研究実績の概要 |
本研究では,インドネシア・マラン市を事例とし,ごみ銀行および集団回収による資源回収(MBシステム)という2つの異なる家庭ごみ資源回収の方式の持続性を評価することを目的としている。ごみ銀行は,参加世帯がごみを分別し,有価物を換金・預金できるものである。MBシステムは,日本の自治会による集団回収と似ており,資源分別は人を雇って実施しており、参加世帯は従来のごみ処理を実施している方式の地域よりも高い費用を負担している。本研究では、この2つの資源回収方式について,「満足度」,「協力度」,「資源回収率」,「環境負荷」の4つの項目でシステムを評価する。加えて「協力度」に影響を与える因子として「環境認知」,「環境行動」,「世帯属性」を設定し,影響の大きさが2つのシステムで異なるかを明らかにする。この結果より,住民に対する負担が少なく,より持続的な資源回収方式となる回収方法を提案することが目的である。 本年度は、2016年9月および2017年3月に,上記の因子のうち、「満足度」,「協力度」に関するデータを得るためのアンケート作成とアンケートの配布、回収を実施した。また、MBシステムの概要に関して聞き取り調査を行った。現状では12,000世帯が加入しており、1日に約137m3/day(約110t/day)の廃棄物を受け入れており、12%の残渣、49%のプラスチックや金属等の資源化物、39%の堆肥化廃棄物に分別されていることなどを明らかにした。 今後は、得られた調査結果を元に,「満足度」,「協力度」,「資源化率」,「環境負荷」を評価し,各システムを比較する。また,2つのシステムで「満足度」,「協力度」に影響を与える因子の違いを明らかにする。以上より,インドネシアで促進するべきごみ資源化システムの提案を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケート作成および調査方法を確立するため、ごみ銀行およびMBシステム参加している20世帯ずつに対して、予備調査を実施した。予備調査の結果をもとに、世帯の収入の範囲、参加組織の種類およびごみ収集システムの概要について知見を得た。この結果から、アンケートを作成し、現地の言語への翻訳を行った。現地の状況から質問項目について精査し、「満足度」、「協力度」,「環境認知」,「環境行動」について、それぞれ13、6、7、6個の合計29個の質問を作成した。アンケートは,Brawijaya大学の学生を雇用し、各戸訪問方式により実施した。2016年9月には約100世帯、2017年3月には約200世帯での調査を実施した。以上より、アンケートの入手率は当初予定のほぼ100%となった。 今年度は、2016年9月および2017年3月に上記の因子のうち、「満足度」,「協力度」に関するデータを得るためのアンケート作成と配布、回収を行った。また、MBシステムの概要に関して聞き取り調査を行った。現状では12000世帯が加入しており、1日に約137m3/day(約110t/day)の廃棄物を受け入れており、12%の残渣、49%のプラスチックや金属等の資源化物、39%の堆肥化廃棄物に分別されており、高い資源化率が実施されていることが明らかとなった。 ごみ組成調査は2017年3月に実施し、WBに参加している60世帯についてごみ組成データを得ることができたが、残りの調査は、2017年4月および5月に実施することとなった。現状でのデータ入手率は10%である。それに代えて、インドネシア国プラブムリ市のWBシステムについて調査を実施し、資源ごみフローおよび回収率を推定した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度入手できなかったのは,WBの残り240世帯、MB300世帯についてのごみ組成データである。これは調査員の選定と依頼を終えて,2017年4月より実施を開始している。 昨年度入手したアンケート調査結果を電子データ化し,「満足度」,「協力度」の評価を行う。 「環境負荷」,2つのシステムから発生する残渣ごみ量と,その残渣ごみ中の有害物量などの質的情報を明らかにすることで評価する。残渣ごみ発生量は一人当たりを原単位として評価する。MBシステムからは、埋立地に搬入される残渣を入手することとした。WBシステムで発生する残渣ごみは,ごみ組成調査時点で採取した残渣ごみの一部を採取し,分析することとした。残渣ごみ中有害物は,重金属と有機汚濁物とし,溶出量および含有量で評価する。試料は現地で乾燥し,蒸留水による振とう溶出試験および王水による分解をBrawijaya大学で実施する。その後,分解液を原子吸光光度計で測定する。有機物含有量は,元素分析装置で評価する。 本研究では,総合的指標の作成による評価は行わず,4つの項目ごとに2つのシステムの優位性を考察する。アンケートで得られた各項目について,正規性検定を行い,棄却された場合にはマンホイットニーU検定,正規性のある場合にはF検定,t検定を実施し,有意差を検定する。「協力度」に影響を与える因子を「環境認知」,「環境行動」,「世帯属性」,「満足度」とし,スピアマン順位相関係数を用いて相関係数を求め,有意性検定を行う。以上の結果より,今後東南アジアで促進するべき家庭からの資源回収方式を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地マラン市で,研究協力者(Prayogo講師)の協力によりBrawijaya大学学生を雇用することができ,アンケート調査およびごみ組成調査を実施することができた。アンケート調査は当初計画通り実施が行え,さらに雇用学生が効率よくアンケートの配布・回収を実施したため,必要経費を削減することができた。一方,ごみ組成調査は当初計画の10%程度しか実施することができなかった。これは,現地の天候不順と雇用学生のスケジュール(試験期間)の問題で調査予定時期に調査を行うことができなかったためであり、これにより次年度使用額が生じた、しかし,研究代表者が2017年4月に現地でのごみ組成調査を実施(実施済み)し,さらに5月には研究協力者による,現地調査を実施することで,当初予定のデータを入手できる予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記理由により,昨年度実施することができなかったごみ組成調査を2017年4月および5月に実施するために,現地学生雇用金として使用する。また,アンケート調査での効率化を行えたため,その分、他の地域(インドネシア、プラブムリ市)のごみ銀行システム調査を行い、地域の違いによるごみ回収率の違いや資源ごみフローの違いについて明らかにするための調査費(現地訪問および解析費用)として使用する。また,残渣試料採取回数として,計画では年2回を想定していたが,試料分析結果の精度を上げるために,3回採取を行うこととする。
|