研究課題
現在の国際的なものづくりにおいて、日本が競争力を発揮するためには、独創的で革新的な製品を創出することが望まれる。そのような問題意識の中、人間の創造的発想は無から有が生じるのではなく、記憶や経験が形を変えて発現するという仮説に基づき、人間の記憶を既存デザイン事例群のデータベースで強化し、その中から系統的、網羅的な探索で、従来なかった発想のきっかけを得ることを試みた。従来、工学設計の分野では、設計問題の系統的記述と処理において、製品の構造、挙動、機能によるモデル化が知られている。一方、近年プロダクトデザインなどの分野では、ユーザ体験の概念が注目されている。本研究では、工学設計の分野の機能、挙動、構造の概念と、プロダクトデザインの分野におけるユーザ体験の概念を総合して、デザイン事例群の記述、分析、新たな案の創出の支援を試みた。具体的な情報処理手法として、まず主語S、動詞V、目的語O、補語Cからなる英語の基本5文型に、程度、時間、場所などの条件を記述する副詞語句Aの有無を加えて10文型の文で、製品の機能とユーザ体験を記述する枠組みを構築し、以下の4カテゴリ14製品について、各製品カテゴリ内で機能、ユーザ体験の差分をデザイン差分マップとして記述した。そして、コンピュータにより製品カテゴリをまたいだ構造、機能、ユーザ体験の類似度を語句や文の類似度として計算した結果、カテゴリ「掃除機」とカテゴリ「耳かき」の間に機能の類似が検出された。カテゴリ「掃除機」のデザイナーはこの結果からカテゴリ「耳かき」の製品を調べることにより、例えばイヤースコープからビデオカメラで隙間の中を見ながら掃除するノズルのようなデザインの創出が支援できる可能性が示された。
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ASME 2017 International Design Engineering Technical Conferences & Computers and Information in Engineering Conference (IDETC/CIE 2017)
巻: 7 ページ: 1-9
10.1115/DETC2017-68058