5月20日に九州産業大学で開かれたデザイン関連学会シンポジウム「人工知能 × デザイン」において「人間の脳・機械の脳・環境の脳」と題する発表をおこなった。環境の概念をここでは関係の総体ととらえて、神経回路になぞらえて、人工知能の時代におけるデザイナーの役割について論じた。報告書として 3月31日に雑誌『a+a 美学研究』において特集「デザイン新潮流」を組んだ。現代のデザインの動向について、8本の論文・用語解説・3本のエッセイを所収している。高安はこのなかで論文2本「無装飾から超装飾へ」「人間の脳・機械の脳・環境の脳」および用語解説「社会デザイン」「批判デザイン」「思弁デザイン」「食のデザイン」を公表した。現在、デザインの語のもとで多様な実践が繰り広げられているが、本研究の考察をとおして、デザインの歴史において主流をなしてきた商業デザインにたいして、対抗デザインというべき潮流に着目して、現代の状況をとらえる視点を得た。対抗デザインには二つの系列がある。一方は、社会デザインの系列であり、社会において人々が直面する問題の解決を目指すのにたいして、他方は、批判デザインの系列であり、直面する問題の解決をいったん保留して、問題にたいする人々の関心をかきたて、公共の議論をうながそうとする。今日の科学技術に導かれたデザイン理解にたいして、社会実践の関心から二つの対抗軸に着目することで、新しいデザイン史記述の展望もひらかれた。
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