研究実績の概要 |
「色音変換発音装置」を利用した,視覚障がい者のための「誘導システム」の開発を目的とする本研究は,初年度(平成28年度)に計画していた予備実験用装置(①色センサ,②白杖本体,③変換装置,④発音装置)の組立開発を実施した.一方,本研究の進路及び学術的位置づけを図ることを目的としたフィールド調査及び文献調査を実施し,本研究が聴覚ディスプレイ開発に関わるもので,その基盤技術が,パラメタマッピング方式のデータ可聴化技術であることを明らかにさせた.そのことから,入力データとなる色面のパラメタと可聴化される音のパラメタとの対応づけが,本研究において最も重要なコンテントであることが確認され,その体系化の課題発見を予備実験の主たる目的とした. 予備実験用パラメタの体系化は,①Analogic(即時性),②Symbolic(意味性),③Emotional(情動性)の3系統を主軸に据え,①を誘導と注意・警告の標識.②をイベント・成果標識,③を着地(ランディング)標識とした.それぞれの可聴化は,①に単音と二度不協和音(長2度,短2度),②に音声的信号,そして③に三和音(長3和音,短3和音)をあてることとした.但し②については現行可聴化装置においては,音声的信号の再生に必須の音の高低に対応できていないことがあり,次年度以降に取り扱い,初年度は①③の検証に特化した. 検証は,①③に則して制作された色面標識のそれぞれの識別性,そして標識の妥当性を特に重視した.結果,それぞれの識別性は,事前トレーニングを実施しているならば問題なく識別されることが分かった.但し異なる標識に移動する際に,方向を見失う課題が現出した.なお標識全体の妥当性についての結論は,②の検証を行うまで保留することとした.研究の現在は,当該検証結果の考察と事前トレーニングが重要であることから,当該マニュアル制作を行っているところである.
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