研究課題/領域番号 |
16K12679
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
板垣 順平 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 研究員 (30557228)
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研究分担者 |
大坪 牧人 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (10381906)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経験知 / ライフヒストリー / デザインプロセス / 身体経験 / デザイン人類学 |
研究実績の概要 |
本研究のテーマとなるユーザーのライフヒストリーと経験知の抽出について, 実験研究では,これまで,全3回の研究会を開催し,研究の具体的な進め方や研究に必要な備品,実験装置,実験環境などを精査した.また,ライフヒストリーと経験知の相互関係を明らかにするための理論構築を目指すにあたり,兵庫県篠山市において,アイマークレコーダーを使った農産物の選別実験を行った.この実験では,選別に個人差が生じやすいヤマノイモを対象として,4人の選別者らを対象に,25個のヤマノイモの選別の様子を時間,視点,動作等に着目しながら観察した.その結果,選別のマニュアルは設定されているものの,選別の判断には,選別の経験年数よりも選別の指導者の意見が強く反映していることが明らかになった.また,対象物を認識する視点は,先ずは中心部分を確認し,その対象物の周縁を確認する傾向があることが判明した.これらの結果をふまえて今後は,改めて実証実験の手法や本研究の理論構築を目指すために協議し,本格的な実験を進める計画である. 屋外研究では,平成27年度に実施した講義科目「デザイン人類学」を通じて,講義の効果測定や情報を整理するために,人類学的な手法を用いた三角測量法の導入を試みた.また,屋外でのフィールドワークを通じて,観察やヒアリング等のプロセス化を試みた.特に,効果測定では,モノの捉え方には個人差が見られ,その要因としては観察者の情報や知識の蓄積の差によるものではないかと推察するにいたった.また,こうした情報や知識の蓄積の度合いがアイデア創出の手がかりと関連しているのではないかという推察にいたった. 今後は,これまでの研究結果を精査するとともに,本格的な実証実験を進めていく計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ライフヒストリーと経験知の抽出については,十分な文献資料や先行研究はないため,文献調査に基づく概念整理は困難であり,パイロット実験を繰り返しながら仮説や理論を構築せざるを得ないため,前年度は,予備調査の段階にとどまった.具体的な実証実験の方法と分析手法については,これまでに実施した予備調査の結果を精査し,早急に組み立てていく計画である.なお,実験研究と屋外研究の分析により,ライフヒストリーと経験知の関連性や,それらが及ぼす対象物への影響については,ユーザーの情報や知識の蓄積の際によって変化するといったことが仮説的に明らかになったが,分析フレームは未確立なままである.そのため,早急に実証実験の手法を整理していく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は積極的に実証実験やヒアリングをおこなう.また,実証実験に必要な備品の購入や環境整備をすすめ,研究計画にそって適切に執行していくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
ライフヒストリーと経験知の抽出については,十分な文献資料や先行研究はないため,文献調査に基づく概念整理は困難であり,パイロット実験を繰り返しながら仮説や理論を構築せざるを得ないため,前年度は,予備調査の段階にとどまった.そのため,当初計画していた予算計画にも影響が生じたために予算の執行を計画通りに進めることができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,前年度に遂行予定であった実験環境の整備を整えるとともに,直ちに本格な実証実験へと移行する計画である.まずは,本研究の拠点となっている名古屋市立大学芸術工学部において,ラボ環境を整える.その後,状況に応じて備品を購入しながら,9月より本格実験へと移行する.また,実証実験の分析フレームを構築するために,国内外の研究施設やデザインファームへの視察等も予定している.
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