本研究の最終年度となる,第二年度目は昨年度に引き続き,名古屋市立大学芸術工学部の授業科目「デザイン人類学」の一環で実施した演習や学外のフィールドワークを研究対象としながら,現場での実証実験を行ってきた.また,大学の授業に加え,兵庫県の東部に位置する中山間地域である篠山市の岡野地区が抱える規格外農産物の利活用を目指した六次産業化事業や農業従事者の現状把握といった,実課題においても本研究が目指す経験知を基盤としたデザインプロセスの検証と実践導入を試みてきた.その結果,経験知がデザイナーや実務者のモノや事象の捉え方との関連性について考察することができた. これらの検証結果については,第64回日本デザイン学会春季大会やロンドン大学SOASで開催された若手研究者国際シンポジウム「The 2nd Collaborative Symposium for Early Career Researchers」で発表し,多くの研究者から示唆を得た. また,本研究の総括として,神戸大学・篠山市農村イノベーションラボにおいて,経済学や農学,文化人類学,デザイン学など,様々な領域の若手研究者14名を招聘した若手研究シンポジウム「地域×研究×実践」を開催し,本研究課題がデザイン領域にとどまらず,他の領域,あるいは他領域間を横断しながら新たな研究課題や学際的な共同研究へと繋げる媒体にもなり得ることが明らかになった. 今後は,これまでの研究成果を論文や書籍としてまとめ,情報の公開と本研究によって検証してきたデザインプロセスの本要請についてされに知見を深めるとともにより多くの研究者や実務者から示唆を得ながらさらなる研究の発展を目指す計画である.
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