研究課題/領域番号 |
16K12682
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
政倉 祐子 愛知淑徳大学, 創造表現学部, 講師 (60468915)
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研究分担者 |
若林 尚樹 東京工科大学, デザイン学部, 教授 (40254586)
田邉 里奈 千葉工業大学, 先進工学部, 准教授 (50386786)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学びの評価 / 子どものためのデザイン / 感性評価 |
研究実績の概要 |
研究代表者らによる従来の評価手法では、参加者15名前後、スタッフによる一斉進行の体験プログラムを対象としてきた。この従来法では、参加者が自ら3つの指標(高揚感・達成感・難易度)をもとにプログラムの工程ごとに評定を行うものであった。本研究課題では従来法の汎用化と活用事例の蓄積を目的とし、次の3点について検討した。 1)体験プログラムの実施形態:プログラムの実施形態に応じて評価手法をカスタマイズできるよう、参加者数と、スタッフの有無、進行形態について検討した。その結果、少人数向けのプログラムでは、従来法のように参加者の全体的な傾向だけではなく、スタッフが感じている参加者個人の様子を定量化し、工程による変化として捉えることが可能であることを示した。また、スタッフがなく、随時進行型多人数向けのプログラムでは、従来の定量化手法と合わせて、プログラム終了後の自由記述による感想を併用することが評価に有用であることを示した。 2)スタッフによる客観評価の導入:参加者による3つの指標に加え、スタッフによる参加者の集中度・得意度の指標を加え、参加者による評価との関連付けを試みた。その結果、参加者の学年(低学年/高学年)によって参加者が感じている高揚感・達成感・難易度と、スタッフが客観的に感じている参加者の集中度・得意度との関係が異なることを示した。集中度・得意度の指標について、今後も評定手続きや分析方法を改善することにより、従来の3つの指標による評価の解釈を深めることができると考えられた。 3)展示施設のマップへの応用:プログラムの時系列に沿って評定を行う従来法を発展させ、展示施設などの観覧ルートに沿って評定を行い、評価をマップ上に可視化する試みを行った。現在は実証実験による検討を進めている。 以上の成果は、いずれもデザイン学会おいて3件の論文発表と3件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には、上野動物園教育普及係、大阪工業大学の赤井、新江ノ島水族館、金沢動物園の協力のもと、実証実験を計8 回実施することにより、「研究実績の概要」に示したように、評価対象となる体験プログラムの実施形態により評価手法をカスタマイズする手法(少人数向けプログラム:「うえのトラ大使」上野動物園、2016年10月30日、同年12月18日、2017年2月5日実施;多人数向けプログラム:「牛乳パックでホイッスルを作ろう」大阪工業大学、2016年8月19、20日実施)、新たな評価指標と組み合わせた分析結果の解釈(「深海Tシャツを作っちゃおう!~デザインを学ぶ学生がお手伝い~」新江ノ島水族館、2017年2月18日実施)、展示施設の評価マップへの応用(金沢動物園、2016年8月7日、同年11月6日実施;上野動物園爬虫類館、2016年10月24日実施)を実現しつつあり、本研究課題の目的である提案手法の汎用化に向けた評価・分析手法の体系的な整理と、活用事例の蓄積を順調に進めている。成果発表を随時行っていることも踏まえ、平成28年度の目標はおおむね順調に進展しているとみることができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、提案手法による活用事例の蓄積を引き続き行うとともに、本研究課題の集大成として、体験プログラムの評価分析のガイドラインをまとめることを目標とする。ガイドラインをまとめるにあたっては、前年度までに実施した実証実験の結果と、蓄積した活用事例に基づき、プログラムの各形態(参加者数、参加学年、進行形態等)に適した評価・分析手法を体系的に示した後、具体的な手法についてマニュアルとして示すことを考えている。引き続き実施する活用事例の蓄積と、ガイドライン作成のために必要に応じて追加の実証実験を行うために、協力いただく園館の年間スケジュールとして日程の確保をいただいている。これらと合わせて、関連学会や研究会等での成果発表を行うとともに、査読論文の執筆も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、雑誌論文3件が招待論文扱いで投稿費用がかからなかったこと、教材費が予定より少額となったことから、395,379円の繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に引き続き実施する体験プログラムへの活用事例の蓄積と、ガイドライン作成のために追加の実証実験を次の通り計画している。1) 6月金沢動物園、2) 6月上野動物園、3) 7月上野動物園、4) 8月上野動物園、5) 10月上野動物園 の他、同様のプログラム構成を繰り返すことにより実証実験を継続していく予定である。成果発表も前年度同様に、学会発表と査読論文の投稿を行う予定である。以上の実証実験の実施と成果発表のために、計画の予算に加え、平成28年度の繰越金395,379円も合わせて使用する予定である。 また、研究分担者である若林の所属変更(東京工科大学から札幌市立大学へ)、田邉の産前産後休業(平成29年6月から平成30年2月頃まで)に伴い、田邉の役割分担である体験プログラムの設計・実施に関して、休業中は研究代表者である政倉と若林で分担して行うものとし、配分額を再調整するものとする。
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備考 |
体験プログラムの実施計画や報告、これまでの学会発表や論文等を紹介するwebサイト
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