研究課題/領域番号 |
16K12698
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石橋 晃 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30360944)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 代謝測定 / 睡眠分析 / 体動情報 / 非接触 / 非侵襲 / 高清浄環境 |
研究実績の概要 |
オリジナルの高清浄環境技術であるClean Unit System Platform(CUSP)の性能向上によって、従来LSI産業や重篤な患者を対象としていた高度清浄環境を広く一般病棟のみならず、家庭や運動ジムなどの民生応用に展開した場合に如何なる価値や波及効果が医療分野・産業・社会にもたらされるか検討を行っている。世界で初めての孤立閉鎖系をなす静穏高清浄環境を実現した。孤立閉鎖系であるという特徴を生かし、CUSP内部空気における酸素濃度や二酸化炭素濃度を測定することにより、非接触・非侵襲条件下で、体動情報を得つつ、同時に孤立閉鎖系性によりCUSP内での人間活動(睡眠、運動、消化等)時における代謝量の測定が可能であることを示した。CUSP内部での就寝や運動を含む人間のあらゆる活動の側面で、その体動量の検知と同時に代謝量の把握をできることから、高齢者居住はもとより一般健常者を対象とする次世代新ウエルネス・健康産業創造のための要素技術の開発に成功した。また共同研究により、コンパクトな酸素濃度、二酸化炭素濃度、粒子数計測の集積化システムのプロトタイプも作製し、その動作を確認するとともに、データをクラウドに上げて、遠隔地からもモニターできることを示した。これにより、Kinetosomnogram(塵埃粒子数の増加により就寝時の体動情報を得る)による睡眠品質の遠隔モニタリングが可能であることが実証され、安否確認も基本的に可能であることが示された。閉空間の内外で気流としての気体のやりとりがない孤立閉鎖系による静穏高清浄環境ならでは成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)コンパクトなCUSP(Tr-CUSP)を作製し、その中で就寝することで、外界(即ちT-CUSP非使用時)に比べ睡眠時の塵埃体内取込みが百分の一以下に低減できることを確認し、(2)集積化測定器システムのモデルタイプを作製して、酸素濃度、二酸化炭素濃度、粒子数情報をクラウドに上げて遠隔地からもモニターできることるを実証した。更に、これらに基づき、CUSP高清浄空間が孤立閉鎖系をなすことを利用して、CUSP内にヒトが滞在する際の代謝測定と体動量測定を同時測定できることを示した。これは、無負荷状態下基礎代謝のベースラインの上に上積みされる活動時代謝(非基礎代謝:運動や消化、アルコール分解に伴う代謝等)を運動を伴う非基礎代謝と、伴わない非基礎代謝に弁別して解析できることを示した。CUSPが、世界で初めての静穏高清浄環境下非接触非侵襲の体動情報・代謝量同時測定・分析プラットフォームたりうることの端緒を得た。
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今後の研究の推進方策 |
閉空間の内外で気流としての気体のやりとりがない、世界で初めての孤立閉鎖系による静穏高清浄環境下非接触非侵襲の体動情報・代謝量同時測定・分析プラットフォームとして完成度を上げるべく、酸素濃度、二酸化炭素濃度等の測定精度の向上を図る。塵埃粒子数の測定をより簡便に行えるように改良する。CUSPを進化させて、エアロビクスやリハビリ、さらには医科歯科治療、介護環境としての応用の可能性を探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度途中でCUSP清浄環境の民生応用についての共同研究先(飛栄建設㈱)が申請したものづくり支援事業が採択されたが、当該事業は、CUSP清浄環境の進化・発展という点で、本研究課題と同じベクトルを有することから、当該委託研究事業で購入した実験機器が本萌芽研究にも生かすことができ、物品の購入費用を節約することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の成果として、睡眠分析にとどまらず、新しい側面として、静穏高清浄環境下非接触非侵襲の体動情報・代謝量同時測定・分析という世界で初めての視点が得られたので、この概念および技術の更なる進展を目指すべく、事業完了まで当該年度を通じてマンパワーを確保すための人件費として活用し、事業の成果の最大化を図る。
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