研究実績の概要 |
本年度は絡み織構造による耐突刺し防護原理の解明を目的に、市販絡み織物と比較対照である、同一原料で単位面積当たりの質量が同等の通常の織物を購入し、今回の研究で防護服の要求性能として着目している、通気性と耐突刺し防護性に関する実験を行った。 通気性に関しては通気抵抗試験機(KES-F8-AP, カトーテック)を用いて測定を実施した。織物の重ね枚数は1, 2, 4, 8枚と変化させて試験した。その結果、絡み織物は同等の重量の通常の織物と比較して通気抵抗が75分の1から100分の1と圧倒的に通気性に優れることを定量的に確認できた。 突刺し試験に関しては万能試験機(AC-1kN-CM, ボールドウィン)に今回の研究にあたり開発した突刺し冶具を取り付けた実験装置を用いて試験を行った。突刺し部の先端形状が円錐形の場合と四角錘形の場合について比較を行い、更に突刺し速度に関しては100, 300, 1000mm/minの3段階に変えて実験した。重ね枚数は通気抵抗試験と同様1, 2, 4, 8枚の4段階で行った。試験結果については突刺し過程で織物が示す最大耐突刺し抵抗力と突刺し部が貫通に要する力学的な仕事量である貫通エネルギーに注目して分析を行った。その結果絡み織物は通常の織物と比べて遜色のない大尉突刺し性能を示すことがわかった。突刺し部の先端形状が円錐形の場合と四角錘形の場合の比較では円錐形の場合のほうが貫通しにくい傾向が見られた。また重ね枚数を増加した時には最大突刺し抵抗力に関しては高々重ね枚数に比例した増加を示す程度であったが、貫通エネルギーに関しては重ね枚数の増加割合以上に増加することが知られた。さらに突刺し速度での比較も試みたが今回の実験の設定範囲においては突刺し速度と耐突刺し性能の間にはっきりとした関係は見いだせなかった。
|