研究課題/領域番号 |
16K12704
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
小林 政司 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (60225539)
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研究分担者 |
水野 夏子 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 講師 (70738541)
高田 定樹 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (80563072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超機能性衣服 / スキンケアスーツ / 導電性繊維 / 皮膚バリア機能 / 電気浸透流 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来の被服の高機能化とは一線を画し,被服に対して電気エネルギーを供給することで、より直接的で高い効果を狙う「超機能性被服(SFC)」の提唱とともに、スキンケア(皮膚バリア機能の回復)といった新しい機能の被服への付与を試みている。ここでは、化粧品科学などにおいても重視されている皮膚電位に着目しながら、比較的新しい素材である導電性素材の応用を行う。 平成29年度の研究では、昨年度に引き続き 1 皮膚の表皮を観察するために、河合法(日本産業皮膚衛生協会)を参考にして、ポリ酢酸ビニルを用いて試験前後の表皮レプリカ採取を行い、これを光学顕微鏡カメラで撮影、観察し、本方法により皮膚観察がある程度可能なことを確認した。2 表皮への布帛接触や電磁気的効果などを調査するため、左前腕内側部において厳密に位置を決定し、電圧供給や導電性布帛の使用などの各種条件を適宜組み合わせて被験者1名に対してパッチテストを行った。3 観察による定性的なものではあるが、体内回路 を構成したものでは、皮溝が整い、しっかりした皮丘が形成されているような変化が認められるなど、表皮に電荷が影響を及ぼす可能性があることを示唆する結果を得た。ただし、今年度開始した経皮水分蒸散量(TEWL)、角層水分測定の結果には有意差が認められず、定量的な検討には実験条件の再検討が必要である。4 特に平成29度については、電気浸透流の活用を目論みた市販美容器具であるイオンエフェクターのリバースエンジニアリングに着手し、化粧水、美容液などの併用によるスキンケアにも活路を見出した。 以上の結果をもとに、導電性素材を用いた被服、電源となるバッテリー、制御回路から構成され、皮膚に接触する導電性素材の電荷により起こる電磁的作用によって皮膚のバリア機能回復を狙うスキンケアスーツの開発に役立てていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の科学研究費補助金は、申請額から200万円を超える減額の末に交付が決定していることもあり、ある程度の研究計画の変更もやむないものと考えている。したがって平成 28、29年度には皮膚レプリカの試作を含む観察条件の整備など皮膚観察を中心とした検討を重点的に行った。また、スキンケアの効果に関する評価手段としての皮膚機能の計測については研究の進捗状況を勘案しながら行うこととしている。しかしながら、昨年度末には経皮水分蒸散量測定装置(Tewameter)、今年度には角層水分測定装置(Corneometer)を導入し、実験条件の検討を行いながらその準備を進めている。また、化粧水、美容液などの併用によるスキンケアにも活路を見出し、データロガーによる市販美容器具の解析なども進めており、この点では当初計画より進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
経皮水分蒸散量測定装置、角質水分測定装置の活用による皮膚およびその機能に関する定量的評価のために実験条件の再検討を行い、結果の信頼性向上を図る。また、市販美容機器の原理を利用した電気浸透流のスキンケアスーツへの活用についても併せて検討していく。 なお、スキンケアスーツに関しては、その試作品の完成を目標としているが、基礎実験の重要性に鑑み、当面は小規模なパッチテストに重点を置いて研究を進める。 なお、今年度が最終年度となるため、年度の後半には研究の総括にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成28年度にデータ処理装置として購入したノートパソコンの価格低下、および平成29年度の試薬薬品費の値引きのため発生した。 (使用計画) 消耗品費として使用予定。
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