研究課題/領域番号 |
16K12713
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
細川 敬三 兵庫大学, 健康科学部, 教授 (30311393)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バナナ粉 / 膨化 / グルテンフリー |
研究実績の概要 |
グルテンフリー食品用の素材としての完熟バナナの粘弾性成分の特性解明と開発をするため、本年度はバナナの粘弾性の特性を以下のように進めた。 1)バナナの追熟期間、添加量、製パン時の加水量と砂糖の量の比容積に及ぼす影響 上記4項目について追熟期間0~4週間、添加する砂糖の量0~10 Bakers%、任意の加水量について調査した。その結果、追熟2~3週間、原料とする全粉類(小麦澱粉が主体)に対するバナナ粉の使用割合が10%、加水量70Bakers%、砂糖無添加の条件が最も優れていた。その比容積は約5.01 mL/gであった。 2)各種粉類に対するバナナ粉の膨化効果 11種類の粉類(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、製菓用米粉、製パン用米粉、そば粉、韃靼そば粉、ライ麦粉(全粒)、ホワイトソルガム粉)に対して2週間追熟したバナナ粉を10%加えた原料粉に対して、砂糖無添加、任意の加水量で製パン試験を実施した。その結果、主原料として澱粉を使用した場合は比容積が高く(米デンプン;3.53 mL/g(加水量110 Bakers %)、コーンスターチ;4.09 mL/g(加水量70 Bakers %)、馬鈴薯デンプン;4.21 mL/g(加水量60 Bakers %)、タピオカデンプン;3.90 mL/g(加水量80 Bakers %))であったのに対し、穀粒をそのまま粉砕した粉類では比容積が低く3.00 mL/gを超えるものはなかった。このことから澱粉以外の成分がバナナ粉の膨化能を阻害していることが明らかになった。しかし、どの成分が膨化能を弱めているのかは不明である。今後は、この点を明らかにしてバナナ粉の膨化特性について研究を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の実施計画では、①粘弾性を示す最適なバナナ熟度の決定と②粘弾性に関与する成分の特定まで進める予定であった。現在、①の課題は完了している。しかし、①の課題を進めるにあたりバナナ追熟期間、バナナ粉の添加量、加水量、糖の添加量の各項目の最適条件を検討する際、一つの条件を決定するたびに他の項目について再度条件を検討する必要が生じた。このため想定していたよりかなり多くの時間が必要になった。また、翌年以降に実施する予定であった追熟バナナを用いたグルテンフリー食品の試作を前倒しして実施したため②の課題に着手するのが遅れた。 ②の課題については、粘弾性に関与する成分としてたんぱく質成分と多糖類成分(ペクチン)の可能性を推定している。現在、両者の抽出条件について検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から粘弾性に関与する成分の特定について実施する。先ずは、たんぱく質と多糖類(特に、ペクチン)に焦点を絞って究明して行きたい。 たんぱく質成分については、水、0.5M 食塩水、70%エタノール、イソプロパノール、3%酢酸で順次抽出を行い、特性の異なる4種類のたんぱく質を分画後、各分画について膨化能を発酵試験と製パン試験により粘弾性の評価を行うとともに生地の膨化状況と生成する発酵ガスの保持能力をファーモグラフII-Wにより測定し、粘弾性に関与するたんぱく質種を決定する。膨化能を持つ画分については、その化学構造について詳細な研究を進める。 多糖類については、酸などにより加水分解後、構成糖類の確認と組成を高速液体クロマトグラフィーにより決定し、多糖類の種類を特定するとともに上記と同様に発酵試験、粘弾性の評価、膨化状況と生成する発酵ガスの保持能力などを測定する。なお、当初予定していた粘弾性成分の物性測定のためのファリノグラフによる粘弾力の評価とアミログラフ粘度特性の評価は、バナナ粉を用いた生地がほとんど粘弾性を示さないないことが明らかとなったので、これらの項目の測定は行わないこととした。 次に,バナナ粉を用いたグルテンフリーパンのクラムの内部構造(網目構造とサイズなど)を走査型電子顕微鏡により観察し、従来の小麦粉を原料としたパン(グルテンにより膨化)との違いを観察・解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに使用したが、端数の232円が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の物品費に繰り込んで使用する。
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