研究課題/領域番号 |
16K12713
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
細川 敬三 兵庫大学, 健康科学部, 教授 (30311393)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 追熟バナナ / 膨化 / グルテンフリー / ペクチン |
研究実績の概要 |
小麦粉に含まれるタンパク質グルテンの伸展性などの特性を利用して多くの小麦粉製品が作られている。しかし、グルテンはアレルギーやセリアック病の原因となる成分であるため、これらの疾患のある人は小麦粉製品の摂食を制限されている。追熟バナナにグルテンの代替となる特性が提案されているが、その特性や成分に関する解明がされていない。そこで本研究では、この物性を担う成分の特性を解明するとともに、その物性に合った利用方法の開発を目指している。 本年度は、追熟バナナに含まれるグルテンの代替となる粘弾性に寄与する成分の特定に関する研究を実施した。追熟バナナから粘弾性に寄与する成分を得るため水への溶解性と分子サイズから製パン性を指標に寄与成分の分画を試みた。その結果、この成分は水溶性高分子成分であることが分かった。この水溶性高分子成分の分子種を知るため、ペクチンとタンパク質の定量を実施した。最終的に水溶性高分子成分にペクチナーゼ処理をすることにより製パン性を消失することからこの成分はペクチンであると推定をすることができた。 これまでペクチンの製パンへの利用可能性は知られているが、ペクチン単独でのグルテン代替の可能性についてはほとんど提唱されていない。また、ペクチンは植物に広く含まれているが、バナナに含まれるペクチンの特性についてもほとんど研究されていない。従って、バナナペクチンの特性を明らかにするとともに他の植物に含まれるペクチンとの比較を行うことによりバナナペクチンの特性を知ることで食品への応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、製パン時に重要な膨化に関与する追熟バナナに含まれる成分について検討した。市販青バナナを20℃、2週間追熟したバナナに水を加えホモジナイズ後透析(MW6,000-8,000)し、水溶性低分子画分(WSL)と高分子画分に分けた。高分子画分は、遠心分離(15,000rpm、10分間)により水溶性高分子画分(WSH)と水不溶性高分子画分(WIH)に分画した。得られた3画分を単独、またはそれぞれを組み合わせて小麦澱粉に添加し、製パン試験により3者のどの画分が製パン性に寄与しているかを検討した(比容積が大きいものを製パン性が良いと評価)。その結果、10%バナナ粉添加時(比容積5.01cm3/g)と同程度の比容積を示したのは、WSLとWSHの組み合わせで比容積4.96cm3/gを示した。WSLには酵母の発酵基質となる低分子糖類が含まれると考えられるので、WSLの代わりに砂糖とWSHを添加したところ比容積4.62cm3/gを示した。一方、WSLと砂糖を添加した場合は比容積1.80cm3/gとほとんど膨化しなかった。このことから、製パン性に最も寄与する画分は、WSHであることが明らかになった。 次に、WSLに含まれる製パン性に寄与する成分としてペクチンとタンパク質が推測されたので、ペクチンとタンパク質含量を測定したところ、ペンチンは32.8mg/g・バナナ粉(DW)含まれていたが、タンパク質はほとんど含まれていなかった。そこで、WSHをペクチナーゼ(EC3.2.1.15)で35℃、24時間処理し製パン試験を実施した。その結果、比容積が著しく低下したことから追熟バナナに含まれる製パン性に寄与する成分はペクチンであると推定することができた。今後はバナナペクチンの分子種について明らかにするとともに、製パンに関与する特性について研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
追熟バナナに含まれる粘弾性に関与する成分としてペクチンを推定している。そこでペクチン成分について知るためペクチンを単離し、分子量の推定、構成糖の組成、メチル化の程度などについて調べ化学構造に関する特徴を把握する。物性については、バナナペクチンの粘弾性の特徴を知るためビスコアナライザーによる測定から粘性の特徴を把握する。この時、粉類に任意の割合でバナナペクチンを加えた条件でも測定を実施し、ペクチンを添加した生地の粘性を把握する。 次に、分離したペクチンを用いた製パン試験によりバナナペクチンの製パン性の評価を行う。製パン試験(比容積が大きいものを製パン性が良いと評価)からペクチンの添加割合と加水量についての最適条件を調べる。最適条件での生地のガス保持能を知るためファーモグラフによる測定を行うとともに生地の走査型電子顕微鏡(SEM)による膨化状況の観察からペクチンの膨化能を推定する。 バナナペクチンの応用性を評価するため、各種澱粉や粉類を用いて最適条件となるペクチン添加量と加水量で製パン試験を行い、バナナペクチンの有用性を検証する。また、SEMによるパン内相の観察から粉類の違いによる粉類とバナナペクチンの相互作用について調べ製パン性との関係を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペクチンの化学構造の分析を実施する予定であったが、この解析が遅れたために次年度使用額が生じた。この次年度使用額は化学構造の分析のために次年度に使用予定である。
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