研究課題/領域番号 |
16K12714
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研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
久木野 睦子 活水女子大学, 健康生活学部, 教授 (70152246)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マグロ / 脱血処理 / 官能評価 |
研究実績の概要 |
魚の脱血処理が鮮度保持に大きく影響することは我が国で古くから知られていたが、スシやサシミが世界中の人々に食される現代では、高品質の魚肉を提供するために、脱血処理はますます欠かせないものとなっている。しかし、マグロなどの大型魚の場合、水揚げ時に暴れることで体温が上昇して身焼けを引き起こすため、氷塊水への浸漬による冷却処理が最優先され、十分な脱血処理はできていない状況である。そこで本研究では申請者らが発明した魚類を安全に長時間麻酔する技術を用いて、大型魚を麻酔下で効果的に脱血する技術を確立し、脱血が魚肉の品質向上や消費者の嗜好性向上におよぼす効果について明らかにすることを目的としている。 初年度である本年度は、大型魚専用の水槽と麻酔装置を用いて、最も効率的に脱血できる方法を検討することとした。そこでまず中・小型魚用の麻酔装置を購入し、大型魚専用に部分的に改良を加えるために、大型魚における酸素消費量を調べた。測定の結果、ブリにおいては体重当たりの酸素消費量は陸上動物と同程度であることが明らかとなった。海水の酸素濃度は陸上にくらべ低濃度であることから、魚類の酸素消費量はそれほど高くないであろうと推定していたが、結果は大きく異なっていた。そのため、測定の結果から明らかとなった麻酔下の大型魚に必要な酸素量を供給する装置の検討に時間を要することになったため、効果的な脱血法を検討することはできなかったが、魚類のなかでも大型回遊魚に限っては陸上動物と同程度の酸素消費量を有するという、今後の麻酔技術の確立に非常に有益な結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度に目指していたのは、大型魚の脱血技術の確立であった。研究実施計画では、「中・小型魚用の麻酔装置」を購入後、部分的に改良して「大型魚用の麻酔装置」を準備し、それを使用する予定であった。しかし、大型魚の酸素消費量を調べた予備実験の結果から、ブリなどの大型魚の酸素消費量はほとんど陸上動物のそれと等しいことが判明し、「中・小型魚用の麻酔装置」の部分的改良では必要となる酸素量を装置内に供給できないことが判明した。当初は海水の貧酸素環境(酸素濃度として考えると陸上空気の20分の1程度と試算される)に棲む魚類の酸素消費量はそれほど高くないと推定していたが、少なくとも大型回遊魚に限っては陸上動物と同程度の酸素消費量(体重あたり酸素消費量)を有することが分かった。そのため、「大型魚用の麻酔装置」を準備するには、抜本的な装置の改良を施して酸素ナノバブル発生装置の能力を特段に大きくする必要が生じた。この装置の改良に相当の期間を要していることから研究計画から遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究が遅延した大きな理由であった「大型魚用の麻酔装置」の改良についてはおおむね解決方法が判明し、麻酔下の大型魚に供給する酸素ナノバブル発生装置の酸素供給能力の強化に関する改良を進めている。平成29年度の早い時期には装置の改良を終え、「大型魚用の麻酔装置」を使用することが可能になると見込んでおり、平成28年度に予定していた麻酔下での効率的な脱血方法の検討を行う予定である。また、平成29年度に計画していた脱血処理したマグロ肉を試料とした研究室内での官能評価についても、官能評価パネルの育成、評価方法の検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は中・小型魚用麻酔装置を購入して、大型魚用に部分的に改良してから脱血方法を検討する予定であったが、麻酔装置の改良に時間を要したため、脱血方法の検討まで進めることができなかった。そのため、物品費の支出は当初の予定より少なく、とくに旅費や人件費・謝金、その他の項目については支出を行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は前年度実施できなかった脱血処理方法の検討および当初の計画通り、官能評価方法の検討を行う予定であるため、物品費については、繰り越した今年度分経費と合わせて支出する予定である。旅費および人件費・謝金については、今年度の進捗状況に応じて、支出する計画である。
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