2019年度は、完成した「脱血活け締め装置」を用い、マグロを麻酔下でクールダウンした後に十分に脱血させる活け締めを試みた。マグロの養殖場ではマグロを釣って取り込むが、針に掛かったマグロは引き寄せる際に激しく暴れて魚体温が上昇する。体温上昇は品質を劣化させるため、すばやく内臓を取り除いて氷海水中に漬け込んで体温を下げることを優先させるため、十分な脱血を行うことはできていない。しかし、マグロをそのまま船上に取り込むのは暴れて危険であるため海面から吊り上げる直前に釣り針に電流を流してマグロに電撃を与え、一時的に麻痺させている。 昨年度までの予備試験では30kg級のマグロを電撃せずに吊り上げて「脱血活け締め装置」に移すことに成功していたので、今年度は50~60kg級のマグロを試した。しかし、興奮状態のマグロを電撃なしで「脱血活け締め装置」に移すことができなかったことから、今回は電撃により一時的に麻痺させることとした。電撃後に吊り上げたマグロを5~6℃の低温海水が入った「脱血活け締め装置」に移したところ、魚体は沈静状態を示したことから、無麻酔でクールダウンを行った。クールダウンの時間は3分間と6分間で、クールダウン後に脱血屠殺した。クールダウンしない魚体を対照としてクールダウンがマグロの品質に与える影響を検索した。分析型パネルによる赤身肉の官能評価の結果、6分間クールダウンを行ったマグロは対照マグロより血なまぐさ味がないと評価されたが、3分間クールダウンでは有意差は見られなかった。その他の項目でもクールダウンしたマグロと対照との有意差は見られなかったが、6分間クールダウン後に脱血処理を行ったマグロで血なまぐさ味に有意差が見られたことから、マグロの体温上昇を押さえながら脱血することが可能になれば、マグロの品質向上につながる可能性が示唆された。
|