研究実績の概要 |
食べ物を見ると食欲が増進することを、我々は日常的に経験している。このことから、食べ物に対する視覚情報を摂食行動の動機付けへと変換する神経回路の存在が明らかになりつつある。このような研究が進められる一方で、2030年、日本の総人口は1億1900万人へ減少するが、高齢化率は31.2%に上昇すると推計されている。世界の人口は、爆発的な増加を続け、85億5千万人に達する見込みであり、安心で安全な食料資源の需給がひっ迫すると懸念されるため、視覚情報を代替するセンサシステムの開発は、食品のおいしさ評価や安定供給の面においても、重要なキーテクノロジーになる可能性を有している。
今年度は、食品用ロボットビジョンシステムの構築に向けて研究を進めた。安価でポータブルかつ性能の異なる高性能カメラデバイスを複数台活用し、RGB画像データにより食品を簡易に分類する手法の検討を行った。このシステムで得られる色画像情報は、大量のスペクトルデータを持つため、必要な情報のみを抽出するデジタル信号処理や多次元データ解析が必須となる。
これまでは、スペクトル値と品種の関係を求める方法として、ある特定波長データのみを用いた重回帰分析にて対応してきたが、データを最大限活用するには256段階の全階長データを変数にして主成分分析・クラスター分析などの多変量解析を用いた方が適切であると考えた。これらのデータ処理を施したところ,比較的良好な推定精度を達成した。このように、RGBの3つの連続的に変化するスペクトル情報を取得するだけで、食品の簡易分類への識別率が向上した。
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