大腸発酵由来の水素が生体内酸化ストレスを軽減することをこれまでに示してきた。これまでに水素はヒドロキシラジカルに選択的に電子供与することがin vitroで報告されているが、生体位における水素の作用機構は不明である。本研究では酸化還元電位が極めて低い水素分子がアスコルビン酸(AsA)に代替してα-トコフェロール(α-Toc)再生を介して酸化ストレスを軽減する可能性を調べた。 1.大腸水素によるα-Toc再生の可能性 AsA欠乏にしたAsA合成不能ラットにフラクトオリゴ糖(FOS)を与えたときの各組織におけるα-Toc量を調べた。脂肪組織でのみ、AsA充足ラットに比べ低AsAラットでα-Toc濃度が低下した。しかし、FOSで大腸水素生成を高めると、脂肪組織中α-Toc濃度は改善した。以上より、脂肪組織で大腸水素がAsAに代替してα-Tocラジカルに電子供与することが示唆された。 2.大腸水素によるα-Toc再生が生体内酸化ストレスに与える影響 1.と同様の条件でラットを飼育し、脂肪組織中のAsA濃度、α-Toc濃度、グルタチオン濃度、各種抗酸化関連酵素活性の変動を調べた。腎周囲脂肪、精巣上体脂肪において、低AsAラットのAsA濃度はAsA充足ラットより有意に低値を示し、α-Toc濃度も有意に低下した。一方、FOS摂取ラットの脂肪水素濃度は高く、AsA濃度が低値を示したにもかかわらず、1.と同様にα-Tocは高値を示した。脂肪組織中のグルタチオン濃度の還元型/酸化型比は、AsA充足ラットに比べ低AsAラットで有意に低かったが、FOS摂取ラットで改善が認められた。よって、FOS摂取により生体内酸化ストレスが改善されることが判明した。 以上より、大腸発酵由来の水素がヒドロキシラジカルだけでなく、α-Tocラジカルへも電子供与することにより酸化ストレスを軽減することが示唆された。
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