研究課題/領域番号 |
16K12720
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80401214)
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研究分担者 |
茶山 和敏 静岡大学, 農学部, 准教授 (30260582)
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
二宮 禎 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (00360222)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 乳汁 / ケモカイン |
研究実績の概要 |
当初の予定通り、人工的に調整したミルクを用いて生後2日マウスを8日間哺育することによりCCL25投与群と非投与群のマウスから大腿骨および脛骨を採取することに成功した。採取した脛骨および大腿骨の重量および長さを計測した結果、CCL25投与群で有意に重量および長さが増加していた。このことから、乳汁中のCCL25が乳幼児期マウスの長軸方向への骨成長を促進する可能性が示唆された。 さらに、脛骨について形態計測を行った結果、CCL25投与群は骨量、骨密度、骨梁数が減少し、骨梁間隔が増加する傾向が認められた。さらに、遺伝子発現を検討した結果、CCL25投与により骨芽細胞マーカーおよび破骨細胞マーカーの発現がともに上昇していた。また、組織学的に単位面積当たりの骨芽細胞数および破骨細胞数を計測した結果、骨芽細胞、破骨細胞ともに細胞数の増加が認められた。 以上のことから、CCL25の投与は骨形成および骨吸収の両方を活性化し、長軸方向への成長を促進することが予想される。 さらに、野生型マウスの骨組織におけるCCL25およびその受容体CCR9の遺伝子発現を検討した結果、生後0日から10日にかけて両遺伝子の発現を検出した。このことから、骨組織形成において、これらのタンパク質が何らかの役割を担っていることが考えらえる。さらに、CCR9のタンパク局在を免疫組織学的手法により検索した結果、生後0日、5日、10日マウスともに、CCR9は骨組織中の広範囲にわたって局在を示すシグナルが観察されるが、特に、破骨細胞にその局在が比較的強く認められた。このことから、CCL25のシグナルを破骨細胞が受け取ることが、骨組織形成に何らかの影響を及ぼすことが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、生後2日から8日間、CCL25の有無のみ異なる人工ミルクを投与して乳幼児期マウスを哺育することに成功した。さらに、これらのマウスの骨組織の重量・長さ、骨芽細胞および破骨細胞の細胞数、遺伝子発現、骨密度、骨梁数などのパラメータを比較することができ、母乳中に含まれるCCL25は骨成長を促進する可能性を示すデータを得ることができた。したがって、当初の予定通りの成果が得られていると判断している。 さらに、頭蓋骨から骨芽細胞を採取することにも成功しており、今後はCCL25の投与や分泌量の変化を検討することにより、CCL25が骨芽細胞の機能に与える影響についてさらに検討を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初の予定通り、骨髄中の細胞ポピュレーションをフローサイトメトリー解析によって解析し、CCL25投与の有無が造血に関与する細胞や間葉系幹細胞に与える影響を検討する。また、現在すでに採取している骨芽細胞を用いて、in vitro系によって骨芽細胞分化や石灰化、破骨細胞分化の制御能についてCCL25が影響を与えるのか検討する。これらのデータを得ることにより、乳汁中のCCL25が乳幼児期マウスの骨組織形成に与える影響を明らかにする。また、人工哺育を行う期間をさらに延長して、二次骨化中心が形成される時期までマウスを飼育し、CCL25の有無が与える影響を検討できるか挑戦する。また、人工的に哺育したマウスを長期間飼育し、老齢となった際にCCL25の摂取の有無によって骨組織に影響が認められるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する試薬を最小限にするよう努力した結果次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度以降に物品費として使用する予定である。
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