研究課題/領域番号 |
16K12721
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
向井 理恵 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 講師 (90547978)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フラボノイド / 食品成分 / 筋萎縮 |
研究実績の概要 |
プレニルナリンゲニンの骨格筋合成促進を証明した実験では、プレニルナリンゲニン未配合の群とプレニルナリンゲニン群の摂餌量、体重には変化が無かった。これはプレニルナリンゲニン摂取が骨格筋内タンパク質の代謝回転を変化させ、タンパク質やアミノ酸の利用効率を変化させた結果だと提案するものである。そこで、本年はタンパク質合成に関連したシグナル経路の変化と、タンパク質供給量の違いがプレニルナリンゲニンの効果に影響するか否か検討した。 実験にはC57BL/6マウスを用いて、後肢関節を固定する筋萎縮モデルマウスを利用した。固定を解除した後に、骨格筋回復期へ移行させた。本試験では、プレニルナリンゲニンの給餌開始を固定解除後とする。これによって「合成(回復)の促進効果」を評価することができる。動物実験は摂餌量を同量にし、pair-fed法を採用した。骨格筋の合成経路については、ウエスタンブロット法でPI3K/Aktリン酸化経路の活性化を検出した。その結果、Aktのリン酸化上昇とP70S6K1のリン酸化の増加傾向が認められた。このプレニルナリンゲニンの効果はエストロゲン受容体を介した機能発現であることを確認するため、マウス骨格筋由来C2C12細胞を用いた研究を実施した。その結果、エストロゲン受容体の阻害剤を用いた場合に、プレニルナリンゲニンによるPI3KとAktのリン酸化が減弱したため、プレニルナリンゲニンのエストロゲン様作用が骨格筋合成のメカニズムの一つであることが分かった。蛋白質の供給量が少ない場合の回復促進効果についても検討を行ったが、本年度のデータでは影響の有無を判断するに至らなかった。本データについては、評価系の再検討が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の課題であるマウス骨格筋内でプレニルナリンゲニンがタンパク質合成を活性化したメカニズムの解明については、研究データの蓄積、解析ならびに論文発表へとつなげることができ、順調に進めることができた。一方で、タンパク質供給量を変化させた場合のプレニルナリンゲニンの効果については、実験の実施は完了した。実験結果では、タンパク質の供給量に伴う変化が認められなかったことから、データのさらなる解析を進めずに実験条件の再設定の試行錯誤を実施した。なお、本件については部局移動により研究の開始が遅れたことと、協力大学院生の予定が変更になったことにより、当初の計画より遅れが生じている。実験準備に必要な人員や、道具の確保を年度内に終えられたことから、平成29年度に向けた準備を整えることはできた。 アミノ酸トランスポーターの発現解析については、手技・手法の習得は完了しており、今後のサンプリングとデータ解析によって順調に進むものと推察される。本件については、文献情報の収集なども完了している。ラジオアイソトープを用いたアミノ酸取り込み実験についても、実施した。本件は、手技や手法・解析方法について習得が完了している。アミノ酸取り込みを活性化させることが分かっているポジティブコントロール実験を実施したが、期待した結果を得ることができなかった。これは、実験条件の設定に不備があると考えられたことから、文献調査と実験条件の設定を並行して行うことが必要であると考えられた。全体としては、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った研究は平成29年度の計画に計上したものが一部含まれていた。それらの検討課題については、順調に遂行できたが、平成28年度の計画実施に含んだ下記課題については十分な実施が出来ていない状況である。この点を鑑み、平成29年度の推進方策を下記のように考えている。 本年度に実施したプレニルナリンゲニンとタンパク質量との関連性の解明については、実験条件を詳細に検討することが求められる。具体的には、タイムコース実験を行うことで生理学的な変化を追うことが必要である。また、今後の研究の方向性を見極めるために、メタボローム解析などを用いて、プレニルナリンゲニンがタンパク質合成を促進する場合に影響する新規経路を発見することが重要であると考えられる。 その他、アミノ酸代謝経路に及ぼすプレニルナリンゲニンの効果を検討するために、アミノ酸出納に影響を及ぼすトランスポーター発現量の確認を実施予定である。本研究課題で実施した実験に用いたマウスより得られた小腸ならびに骨格筋からcDMAを調製し、各種アミノ酸トランスポーターの発現量を測定する。さらに、アミノ酸取り込み量の測定の実施が必要であると考えられる。具体的にはプレニルナリンゲニンを摂取させたマウスより骨格筋を摘出し、培養を行う(Ex vivo)。そこへトリチウムラベルしたアミノ酸を処理し、経過時間的な取り込み量を測定する。これにより、プレニルナリンゲニンによるアミノ酸利用効率の増加効果を評価する。培養が困難な場合は骨格筋組織を摘出し、生理的条件を保持できる緩衝液に浸漬した後に、トリチウムラベルしたアミノ酸を作用させることで同等の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費については、研究補助員の公募をかけたものの適任者がおらず使用に至らなかった。旅費については、海外への出張予定が中止になったため使用に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度からの繰り越し金は、人材不足による実験の遅延を取り戻し、問題を解消するための簡易キットやReady-to-useの試薬などの購入に回す予定である。
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