研究課題
がん患者において、栄養状態は治療、合併症、予後等に大きな影響を及ぼすため、栄養状態の評価は非常に重要である。しかし、現在までのところ、どのような栄養評価を行うのがよいのかといったことさえ確立されていないこともあり、実地臨床の現場において、栄養状態の評価が系統的に広く行われているとは言い難い。本研究においては、徳島大学病院に入院する消化器がん患者を対象として、特別な機器を必要とせず、問診及び簡単な視診、触診のみで、もっとも簡便に実施可能であると考えられる主観的包括的栄養評価法の妥当性・有用性を検証することにより、将来的に主観的包括的栄養評価法を病院、診療所、在宅を問わず簡便に実施可能で有用な栄養スクリーニング・アセスメントツールとして広く普及させることを目的としている。徳島大学病院に消化器がんの手術のため入院した患者の約65%が主観的包括的栄養評価法により栄養状態良好と判断され、約30%が中等度不良、残り5%が高度栄養不良と診断された。この判定は、身体計測、血液検査、体組成分析等の所見とよく相関していた。そのため、特別な機器を必要とせず、問診及び簡単な視診、触診のみで評価しているにもかかわらず、主観的包括的栄養評価法は有用な栄養スクリーニング・アセスメントツールであることが実証された。この結果をもとに、まずは徳島大学病院の全入院患者において主観的包括的栄養評価法による栄養スクリーニングの実施を始めている。一方で、主観的包括的栄養評価法の評価項目のひとつである体重減少に関しては、体重減少することと予後悪化が相関せず、むしろ、入院時の体格指数 (BMI: body mass index)が予後と強く相関することがわかった。体重減少は、一般的に予後不良因子として認識されているにもかかわらず、予後と関連しなかったという結果については、今後さらに詳細な検討を進めていく必要がある。
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