本研究の目的は、Information Communication Technology(ICT)を活用した遠隔個別栄養指導が肥満2 型糖尿病患者の代謝状態及び食行動に与える有効性を検証し、さらに食事エネルギー密度の概念を活用した栄養指導の意義を明確にすることである。また遠隔個別栄養指導は、現実世界に情報を付加する拡張現実(Augmented Reality:AR)により、遠隔でフード模型の実物サイズを知覚可能にすることで実現し、対面式個別栄養指導との非劣性を検証する。 平成27年度はAR技術を用いたフード模型の開発、食事エネルギー密度が低値に設定された冷凍宅配弁当の開発、Cisco社製テレビカンファレンスシステムを用いた遠隔栄養指導方法の整備を進めた。平成28年度は2型糖尿病患者12名(年齢63.5±10.1、BMI26.7±3.8、HbA1c8.0±1.6%、eGFR77.1±22.9)を対面形式の栄養指導群(対面群:6名)と遠隔形式の栄養指導群(遠隔型:6名)の2群に無作為に分け介入研究を実施した。評価項目はHbA1c、体重、食行動変容とした。本計画ではAR技術を用いたフード模型の作成を試みたが、3次元のフード模型とは異なる、2次元投影での開発に留まった。実寸サイズのフード模型と同様の比較検証が困難と考え、本計画ではAR技術のフード模型を使用した検証は実施できなかった。 各群ともに食行動変容に関する意識調査では、介入後に有意な改善を認めた。遠隔群は介入後、体重(対面群:介入前62.7±7.5kg⇒介入後62.7±8.6kg、遠隔群:介入前65.8±12.4kg⇒介入後64.4±12.4kg)やHbA1c(対面群:介入前7.3±0.6%⇒介入後7.0±0.4%、遠隔群:介入前8.7±2.1%⇒介入後7.5±1.3%に有意な変化は認めなかったが、対面群と同等の推移を示した。
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