研究実績の概要 |
老化やストレスは生活の質に影響するが、適切な栄養はこれらの効果を防ぐ手段の一つとなりうる。今日、高齢者が消費するタンパク質の量に焦点が当てられているが、個々のアミノ酸代謝の変化は十分に考慮されていない。さらに、平均寿命と健康寿命の差は、男性の場合よりも女性の方が大きい。今回の研究では、女性の健康寿命の延伸を目指すために、若年期と中年期の雌マウスを比較することにより、ストレスと加齢が代謝と情動行動に及ぼす影響を評価することとした。28日間毎日拘束ストレスを負荷した。その後に行動試験と組織のサンプリングを行った。結果として、中年期マウスの体重はストレスによって著しく低下した。新奇環境にマウスを置くオープンフィールド試験における全移動距離に加齢とストレスの効果は検出されなかった。また、高架式十字迷路を用いた不安用行動の評価と強制水泳試験を用いたうつ様行動の評価においても加齢とストレスの影響は現れなかった。高齢化は、脳におけるアミノ酸代謝と子宮および卵巣における様々なアミノ酸レベルに影響を与えた。なかでも子宮と卵巣に注目すると以下のような変化が認められた。中年期の子宮において、遊離L-Asp, L-Ser, L-Gln, L-His, L-Arg, L-Tyr, L-Val, L-Met, L-Phe, L-IleおよびL-Leuは若齢期のものよりも高かった。卵巣においても、遊離L-Asp, L-His, L-Arg, Tau, L-Met, L-Phe, L-Ileおよび L-Leuは中年期で高い値を示した。結論として、中年期マウスは体重減少の点でストレスを受けやすく、脳および生殖器官のアミノ酸代謝はストレスよりもむしろ老化の影響を強く受けることが判明した。
|