研究課題
酸化ストレスによるミトコンドリアの損傷とその機能の低下が、卵子の質も下げると考えられている。また、3-ニトロプロピオン酸 (3-NPA) はミトコンドリアの神経毒であり、酸化ストレスを増加させ加齢を促進させることが知られている。そこで、主に卵子の質という観点から、加齢が生殖機能に与える影響を調べ、また、3-NPAの投与による雌マウスの生殖機能や身体機能の変化を探ることを目的とした。C57BL/6Jマウスの若齢期 (7週齢)、中年期 (8ケ月齢) において活性酸素種 (ROS)と卵子の質を免疫蛍光染色によって観察した。卵子の質は、紡錘体の乱れや染色体の配置の変化を確認した。また、3-NPAを若齢期と中年期のマウスに投与し、酸化ストレスにより卵子の質がどのように変化するかを確認した。次いで、若齢期マウスの急激な加齢モデルとして高濃度の3-NPAの投与の影響を調査した。生殖機能におけるアミノ酸代謝の変化をUPLCで分析した。また、抗酸化酵素のmRNA発現をqRT-PCRを用いて調べ、酸化ストレス増加の指標とした。若齢期に比べ、中年期のマウスの卵子では活性酸素の増加は見られたが、卵子の質の低下は確認されなかった。そこで、3-NPAの投与により酸化ストレスを増加させると、若齢期および中年期のマウス共に、3-NPAの濃度依存的に卵子の質の低下割合は増加した。高濃度の3-NPAを投与すると、アミノ酸代謝に変化を生じたことから、3-NPAがミトコンドリアに影響を与え、代謝に乱れを生じさせた可能性が考えられた。また、線条体と子宮においてカタラーゼのmRNA発現が増加したことから、酸化ストレスの上昇が確認された。生殖器では子宮のみに遺伝子発現の変化が認められたため、酸化ストレスは生殖器官間で異なる影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University
巻: 63 ページ: 61-70