動植物体内には広く生物時計が存在しており,体内で見られる様々な生命現象が約24時間周期のリズムを刻んでいる。しかしながら,植物性食品の体内で刻まれているリズムや含有成分や機能性に与える作用についての研究は萌芽状態である。そこで本研究では,就眠野菜の体内で刻まれている生物時計に着目し、含有成分や機能性を日内経時的に追跡することで、野菜には機能性の観点から最適な収穫時刻があることを導き出すことを最終目的として実施している。これまでの研究において,(1)主要な大豆品種の1つであるフクユタカを長日環境下で発芽させた後,恒常的明期条件下で葉の日内挙動を撮影し,ダイズの葉は明確な就眠リズムを刻む,(2)ダイズに含まれている代表的な機能性成分であるイソフラボンの生合成経路を司っている二つの遺伝子(C4H、IFS)の発現量が夕刻(ZT14)に顕著に低下するとともに,総イソフラボン量は夕刻が朝方に比して若干減少するとの結果を得ている。これを受けて実施した平成29年度の試験では,以下の成果を得た。 6時間間隔で収穫したエダマメおよびダイズを用いて試験を実施,豆果内では,(3)時計遺伝子であるLUXが明確な日内リズムを刻んでいる。(4)イソフラボン合成系遺伝子の中では,桂皮酸4-水酸化酵素(C4H)の発現が,ZT6にピークを示す日内リズムを刻んでいる可能性がある。(5)イソフラボン含量はZT6に低値を示す。ダイズ豆果中においては、抗酸化活性やイソフラボン含量のさらなる情報収集が必要であると考え、今後の研究課題としている。
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