研究課題
我々は、サンショウ成分には抗肥満効果があり、高脂肪食による脂肪肝を抑制し、糖・脂質代謝改善効果を有すること、また熱産生タンパクUCP-1をはじめベージュ化に関与する遺伝子発現が亢進することを明らかにしてきた。ジャクソン・ラボから輸入したThermo Mouse(FVB/N-Tg(Ucp1-luc2, -tdTomato) /1Kajim/J)を繁殖させ、個体識別のために耳パンチをした耳片組織からゲノムDNAを抽出しGenotypeをチェックしたところ、雄のみにUCP-1/ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子が導入されていることが判明した。すなわちY染色体に挿入されているということである。これらの事は、トランスジーンの導入マウスはヘテロ体でしか得られないことを意味している。実験するにあたり、まず寒冷刺激、beta-アドレナリン受容体アゴニスト刺激にて、UCP-1/レポーター遺伝子の発現が上昇するかどうかを確認した。寒冷刺激にて、特に褐色脂肪組織におけるUCP-1/ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子発現について検討したところ、9℃で5時間では発現が見られなかったが、16時間でレポーター遺伝子発現が見られた。次に、CL316243について検討したところ、3日間腹腔内投与で同腹の兄弟6匹のうち4匹でレポーター遺伝子発現上昇が見られた。また同複にもかかわらず、1匹は反応が弱く、さらにもう1匹はこれらの刺激を与えなくても、強く発現を示すものも存在した。次にサンショウ成分を混餌して、8週間に渡りUCP-1/レポーター遺伝子発現を追跡したところ、褐色脂肪組織での発現上昇はほとんどなく、下腹部でのUCP-1/ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子発現上昇は見られるものの、これらの組織は鼠径部皮下脂肪ではなかった。それ以外にも、Y染色体に導入されているためか、睾丸そのものでの発現上昇が認められた。
3: やや遅れている
輸入したThermo Mouse (UCP-1/Luciferase レポータートランスジェニックマウス)の輸入に手間取ったため、当初の計画より遅れている。また、Y染色体にトランスジーンが挿入されているためヘテロでオスにしか発現せず、交配により実験に用いる匹数を揃えるのに苦心している。睾丸が非特異的に発光するするため、鼠径部皮下脂肪のベージュ化が分かりにくいという難点がある。
上記の問題があるため、新たにトランスジェニックマウスを作成する必要があるものと考えられる。ただ、褐色脂肪組織での発現に関しては、概ね既知の刺激に対する発現パターンが再現されていると考えられるため、褐色脂肪組織でのUCP-1遺伝子発現上昇をさせるもののスクリーニングには使えそうである。
輸入遺伝子改変マウスの到着に時間がかかり、これを用いた実験をする時間があまりなかったため
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Chronobiology International (Epub 2017 Dec.22)
巻: 35 (4) ページ: 499-510
10.1080/07420528.2017.1415922