研究課題/領域番号 |
16K12730
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
東尾 浩典 岩手医科大学, 教養教育センター, 講師 (50342837)
|
研究分担者 |
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40305991)
吉田 潤 岩手医科大学, 教養教育センター, 助教 (20611007)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マスト細胞 / 調節性分泌 / 蛍光プローブ / アレルギー / 蛍光プレートリーダー |
研究実績の概要 |
食物アレルギー・花粉症・気管支喘息等の即時型アレルギーは、マスト細胞の分泌顆粒中の化学伝達物質が開口放出(脱顆粒)されることが引き金となる。それゆえ、脱顆粒をコントロールすることが即時型アレルギー抑制の鍵であり、アレルギー反応を増悪させる物質の同定と除去、抗アレルギー活性を有する物質の同定と利用は、医療上・産業上重要な課題である。そのような物質のスクリーニングには多検体解析を容易とする手法が求められる。本研究では、脱顆粒イメージング技術に立脚した多検体解析系を構築・検証している。 [1] 細胞外液に添加したpH感受性蛍光プローブ(酸性条件下で緑色蛍光を発し中性条件下で蛍光が消失する)をラットマスト細胞株RBL-2H3に取り込ませ内部が酸性環境である分泌顆粒を蛍光ラベルした。分泌刺激を与えると蛍光顕微鏡観察では蛍光消失が確認できた(分泌顆粒内の蛍光プローブが、脱顆粒の結果、中性の細胞外液に触れることで蛍光が消失)。そこで96-wellプレートにRBL-2H3細胞を撒種し蛍光色素を取り込ませたのち分泌刺激を与え、蛍光プレートリーダを用いて蛍光量変化を観察したところ、脱顆粒の継時的なモニターが容易に可能であることが明らかになった。しかしwell毎の蛍光強度のバラツキ等の問題点も生じた。 [2] 分泌顆粒内の基質との相互作用で強い赤色蛍光を発する色素を細胞外液に添加し分泌刺激を与えると、細胞膜との膜融合が生じた分泌顆粒由来の構造が蛍光ラベルされることを蛍光顕微鏡観察にて確認済である。これも96-wellプレートに撒種した細胞と蛍光プレートリーダを用いて継時的に蛍光量変化をモニターできることが明らかになった。well毎の蛍光強度のバラツキは[1]で用いた手法よりは少なかった。 [1], [2]ともに多検体解析へ向けた更なる最適化が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光プローブと蛍光プレートリーダを用いた脱顆粒時の蛍光量変化の測定系は96-wellプレートを用いた多検体解析に適用可能であることが確認できた。また、二つの蛍光プローブで同時に蛍光量変化を測定することも可能であり、これはfalse-positiveの可能性を低減させる等、スクリーニングの信頼性の向上性に資することができると思われる。また、スクリーニングによって見出された物質の作用特性に関する情報も得られる可能性がある。 加えて、マスト細胞脱顆粒メカニズムの解析といった基礎研究においても、二つの蛍光プローブを組み合わせた同時測定系で、従来の生化学的な脱顆粒度合の測定法では得られない新規かつ有益な情報が得られることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
[1] 本測定系のより多検体解析へ向けた最適化を行う(他の蛍光プローブの適用可否も検討する)。 [2] 脱顆粒メカニズムの各ステップに働く遺伝子をノックダウンあるいはゲノム編集することにより、脱顆粒が抑制・促進された場合の蛍光強度変動パターンを把握しプロファイルする。 [3] 既に報告されている抗アレルギー活性物質を用いて本測定系の実用性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
蛍光プレートリーダーは使用蛍光プローブによって励起用・測定用フィルターを使い分ける必要がある。そのため蛍光プレートリーダーの励起用・測定用フィルター(1枚税込15万円)2枚あるいは3枚の購入を予定していたが、平成28年度に用いた2種類の蛍光プローブには既存のフィルターで対応可能であったため、残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究により、蛍光プローブと蛍光プレートリーダーを用いた脱顆粒時の蛍光量変動の測定が可能であるとわかった。より精度の高い測定系の構築を目指すために、平成29年度は他の蛍光プローブの適用可否も検討するが、その際に励起用・測定用フィルターを購入する必要がある。 また、平成29年度分は当初計画通り、測定系の評価検証のための実験に用いる。
|