研究実績の概要 |
終末糖化産物(AGEs)は各種の疾病の原因になると言われ注目されている。AGEsの中でもglyceraldehyde (GA)由来のAGEsは毒性も強く(toxic AGEs,TAGE)数多くの疾病に関与するとされている。このTAGE前駆体であるGAを0-4 mMの濃度で初代培養心筋細胞に添加して培養すると濃度依存的に変性壊死を生じ、細胞内小器官である小胞体が最初に障害を受けることが明らかになった。また、初代培養肝細胞でも同様に障害を受け、心筋細胞と異なり多くの脂肪滴の出現を見た。この形態学的変化は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)発症をうかがわせるような形態学的な変化を示していた。さらに培養心筋細胞と同様に最初に障害を受けるのが小胞体であった。心筋細胞の心拍数を計測した結果、GA濃度依存的に減少し、4 mM添加時では6時間で心拍が完全に停止した。GA由来AGEsの蓄積をSlot blott法で解析すると濃度依存的、および経時的に増加し、抗TAGE抗体で培養心筋細胞や肝細胞を免疫染色すると同様の結果が得られた。また、Western blottで抗LC-3抗体で解析するとオートファジーが濃度依存的に減少した。両培養細胞にブドウ糖、果糖を添加して培養すると濃度依存的に抗TAGE抗体による免疫陽性細胞の数が増加して、染色強度も増していく様子が観察された。ブドウ糖よりも果糖添加の方が免疫染色の結果から強く染色されている細胞が多かった。さらに動物実験で高果糖ブドウ糖液糖を飲ませて3ケ月間飼育すると心筋細胞や肝細胞にTAGEの蓄積が増加傾向にあることがSlot blott法で解析され、免疫染色の結果からも無処理の対照群と比べ陽性細胞が多かった。 以上の結果からGA、ブドウ糖、果糖などが細胞内で代謝されるとTAGEが形成、蓄積され細胞に障害を与えることが明らかになった。
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