研究実績の概要 |
平成28年度は、現在までα-リノレン酸(n-3系)のシス-トランス混合型脂肪酸標準品が未市販であったことより、α-リノレン酸の標準品をトランス化反応させた試料を用いて、銀イオンカラムを2本連結・装着したリサイクルバルブ・HPLC法を用いて、オールシス体を除くα-リノレン酸のトランス体とシス-トランス混合体7種の合成・精製に成功した。また、各精製試料は、高分解能GC/MS及びNMR解析に供し、それら試料の同定にも成功した。 次に、上記の精製・同定した標準品を組み込んだ高分解能GC/MSによる高精度分析法の構築を試みた。具体的には、研究代表者が作成した オレイン酸(n-9系)、リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸のトランス型及びシス-トランス混合型脂肪酸(以下、トランス脂肪酸等)の3つの脂肪酸異性体の計14種(シス体を含むC18:1△9;2種、C18:2△9,12;4種、C18:3△9,12,15;8種)に、44種の市販脂肪酸標準品を加えた、全59種類の脂肪酸の新規高精度型脂肪酸分析法の構築を試みたところ、極めて精度良く定量可能な分析法を開発することができた。その際、興味深い深いことには、分析した母乳試料中に上記3種のシス・トランス型の脂肪酸が高濃度で検出されたことであった。さらに、市販食品についても調査したところ、市販のカレーや調理パンにおいても、高濃度のトランス脂肪酸が観察されたことであった。 今後の計画としては、日本人の真のトランス脂肪酸等の1日摂取量および健康影響の解明を目的として、種々の市販食品や食事試料のほか、調理過程で非意図的に生成するトランス脂肪酸の生成機序について検討を行う予定である。
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