保育所や学校では食物アレルギーの有病率や給食対応の実態調査を経たのち、アレルギーに対するガイドラインなどの行政指針並びに給食の対応マニュアルが示されているが、乳児院や児童養護施設の全国的な実態を示す調査研究はまだない。また、3食とも提供が必要な施設の特徴を考慮したガイドラインやマニュアルもない。そこで、全国規模の児童養護施設等における食物アレルギーに対する体制、給食対応の実態・体制を把握し、問題点を整理するための実態調査をした。集計結果を「入所型児童福祉施設における食物アレルギーの給食対応についてのアンケート 平成28年度実施 単純集計結果報告 」を平成29年11月に作成し、一部修正したものを平成30年に国会図書館に寄贈した。調査結果から、食物アレルギー児の有病率が乳児院で4.3%、児童養護施設で3.1%であることなどを明らかにした。また、給食対応についてガイドライン等を用いていた施設では、情報収集書式の整備や情報の更新、ヒヤリハット・誤食の報告などでルール化された取り組みを行っているなどの知見を得た。ガイドライン等のある方がアナフィラキシーショックを起こした児童や入所時に情報未確認の児童がいる施設が多かったが、調査時点では医師の診断書を得ているなど、入所後に適切な対応がなされていることを報告した。この結果をまとめた「乳児院・児童養護施設における食物アレルギー児の在籍状況および給食対応の実態:ガイドライン・マニュアルの有無別の比較」が原著論文として日本公衆衛生雑誌に掲載された。また、自由記述から、入所時のアレルギー情報に課題があることを質的にまとめた。さらに、保育園・小学校と比較したとき乳児院・児童養護施設では経験や知識面で困っていることを分析した。
|