エネルギー代謝は概日変動しており、食事や運動がエネルギー収支に与える影響は、そのタイミングによって異なることが明らかになってきている。本課題では、マウスを利用して、給餌のタイミングや明暗環境の周期を変動させることによって、体重やエネルギー代謝、末梢組織の体内時計等がどのように変化するのかを解析した。まず、6種類の光環境(明暗を12:12時間で固定、12:12時間で週2回6時間の前進、後退、あるいは、前進と後退の交互、1:1時間で固定、明期が1日あたり1.7時間短い22.3時間の周期)の条件について、2ヶ月間の飼育を行い、体重変化を比較したところ、光環境を変動させる条件において体重増加(肥満)の傾向が認められた。また、最も体重増加が大きかった光環境を週2回6時間前進させる条件において、呼吸商を測定したところ、呼吸商の昼夜の概日変動の周期性が乱された個体ほど体重が増加する傾向にあることが明らかとなった。また、周期性が乱されている期間の呼吸商の平均値は、やや高い値を示していたことから、脂質の燃焼が減少し、炭水化物の利用割合が増加していることも明らかとなった。さらに、各臓器の時計遺伝子の発現リズムから、末梢組織の体内時計を測定したところ、体重が増加する個体ほど、肝臓の時計位相がずれていることが示唆された。以上の結果から、明暗周期を変動させると、摂餌時刻が変動し、末梢組織間での体内時計の時刻情報がずれることで、脂質の燃焼が減少して合成が優位となり、体重増加(肥満)が引き起こされるものと考えられる。また、末梢組織の概日時計を解析している過程で、これまで概日時計が働いていないと考えられていた精巣においても、組織培養に合わせた概日リズムを刻むことを見出した。
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